クルマから街を取り戻す! 事故とは無縁で、平和な新概念「ビルアペゼ」をご存じか【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(12)

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フランスが推進する新しいまちづくりの概念「ビルアペゼ」とは何か。まちをクルマから人に取り戻し、多様なモビリティが共存していくその取り組みに迫る。

スローなまちづくりの未来

フランス・レンヌの中心市街地全体を20km/h規制に(画像:レンヌ市)
フランス・レンヌの中心市街地全体を20km/h規制に(画像:レンヌ市)

 ビルアペゼを導入する上では、市では路線バスのルート変更を行わないことを大切にしており、また、従来自動車の走行速度は12~20km/h程度であることから、自動車利用者やバス利用者への影響はほとんど生じていないそうだ。

 普及が進んでいる地域では、商店街が戻りつつあり、自転車や歩行者による来訪が増え、商店の売り上げも増えているそうだ。ナント市役所の担当者からは、商店街から駐車場整備の要望の声はもうなく、ビルアペゼは高齢者等の特定の人たちのための政策ではなく、市民皆のための政策として取り組んでいるという言葉はとても印象的だった。

 わが国では、観光地やまちなかが歩行者であふれかえっている道路空間に、自動車が走行している状況を各地で目にする。これら空間では、それぞれの優先順位が曖昧であり、自動車も歩行者も危険を感じながら譲り合うという慣習を数十年続けているのが実態だ。

 ゾーン30という政策が日本でも広がるなか、そこからもう一歩進め、歩行者や自転車、公共交通を最優先としたゾーン20を導入し、スローなまちづくりを始めてみてはどうだろうか。その先には、事故とは無縁、静かで人々の笑顔や笑い声があふれ、道路を利用する人たちの顔が見える心ときめく世界が、日本中に広がっているのではないか。

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