街全域「最高時速30km」が世界の新標準? 環境・安全を両立する交通政策をご存じか【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(10)
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交通事故での重傷化防ぐ

世界では毎年135万人が交通事故により死亡しており、これは24秒に1人が世界中のどこかで、亡くなっていることを意味する。パンデミックを契機に、世界各地では交通事故による重傷化を未然に防ぐため、都市全域を最高速度30km/hとする政策が採用され、高い効果が続々と報告されている。
フィンランド首都のヘルシンキが全域30km/h規制を採用し、2021年には年間の歩行者が関連する死亡事故がゼロ件になったのは大きな話題だ。大都市で年間死亡事故ゼロを実現することは無理であるという固定観念を変えたことも後押ししたのだろう、2021年1月には、ベルギーの首都ブリュッセル、8月にはパリ、さらにはロンドンやウェールズでも採用されてきた。
もちろん、幹線道路等の都市の重要路線は除外しているのが一般的だ。東京で例えれば、山の手線内側を全域30km/h規制とし、首都高などの一部の主要幹線道路を50km/h規制としたと考えると分かりやすい。
また、都市だけではなく、2021年5月には、スペインが基本全国を対象として実施(中央線がない区間は20km/h規制)、フランスも200以上の都市で導入が進むという。日本では、実勢速度との乖離(かいり)を小さくするため、規制速度の上限を上げる動きもみられ、先進諸国とは大きく状況が異なる。
規制速度の上限を30km/hとしているのには、大きな意味がある。今後も人とクルマの共存は不変であり、人とクルマが30km/hで衝突した場合には、10人に1人の割合で重傷化し、50km/hで衝突した場合には、半数の歩行者が重傷化すると報告されている。また、世界では衝突事故の48%は速度超過が原因と言われている。
信号交差点が多い都市部では、自動車の旅行速度(信号待ちや渋滞による停止を考慮した速度)は15~25km/h程度のため、主要な道路への影響は少ないという考えが一般的だ(ただし、パリでは施行前にはタクシー事業者からの大きな反対運動もあったと聞く)。
ブリュッセルでは、1年後には騒音が大きく低下したとの報告もあり、ロンドンでは、タイヤやブレーキの摩耗による粒子状物質の排出量の減少も期待されており、環境への影響低減にも効果的な対策だ。