日本は世界の2周遅れ? モビリティ分野における「官民データ連携」の本質とは【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(4)
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- MaaS, DX, スマートシティ, 牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線, 官民データ連携
いまや官民データ連携という言葉を聞かない日はない。一方で実空間での具体的な取り組み、その実像や本質はいささか不透明だ。スマートシティやMaaSでの重要キーワードである官民データ連携の具体像を理解するには、先行する欧米のモビリティサービス分野の取り組みが大変参考となる。日本の“2周先”を行く世界の動向を報告する。
世界各都市に広がる「MDS」とは何か

米ロサンゼルス市は、市役所みずからがプラットフォーマーとなり、地域の都市経営の取り組みを推進している。
2016年に「デジタル時代のモビリティ戦略」という将来ビジョンを公表し、2018年9月には、MDS(Mobility Data Specification、モビリティ・データ仕様)と呼ばれる官民データ連携の仕様を策定した。その後、わずか2年半で全米から世界にそのコンセプトが広がり、今注目の取り組みだ。
MDSは新しいモビリティサービスを地域に実装していくための、官民での約束事であり、官民のコミュニケーションを円滑にする次世代の手法と理解すると分かりやすい。行政が主役となり、データを通して、交通まちづくりの調整を担っていく、デジタル時代のガバナンスだ。
いわばデジタル版道路使用許可
MDSは、急速に世界中で普及している自転車シェアリングや電動キックボードを当初対象に、これらマイクロ・モビリティサービスを地域に実装していくための官民の決まり事、運用のルールブックという役割で始まった。デジタル道路使用許可と言っても良いだろう。
道路使用許可の契約書がデジタル化されるだけではなく、データの標準化仕様、データ運用までを包含したオープンな枠組みである。
日本でも駅前付近の歩道の一部が自転車駐輪場として運用され始めたり、知らないうちにそのエリアが拡大したりしていないだろうか。それらの運用ルールが電子化され、オープンな手続きで進められていると理解すると分かりやすい。