通学路にクルマはいらない? パリの180か所が「歩行者専用」化で親子安心、日本の一歩先を行く政策とは【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(11)

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世界で大きなムーブメントを起こしている「クルマのない通学路」とは何か。パリの取り組みを紹介する。

日本の一歩先を行く政策

スクールストリート(画像:牧村和彦)
スクールストリート(画像:牧村和彦)

 通学路での学童の悲惨な交通事故が後を絶たない。安心して子育てできる環境を都市空間の再設計という思想で取り組み、都市に住む価値、生活の質を向上していく「クルマのない通学路(カーフリー・スクール・ストリート)」が世界で大きなムーブメントを起こしている。先導するパリの取り組みを解説する。

 パリはこのわずか2年ほどの間に、約180の学校前の通学路を歩行者専用とする取り組み「Rues aux Ecoles(スクールストリート)」を進めてきた。日本でも登下校時間帯を一時的に自動車の通行を禁止するスクールゾーン制度が存在するものの、パリの取り組みは、

・環境問題
・生活の質向上

を目指した、さらに一歩先を行く政策だ。

 パリでは市内の幼稚園や小学校前の通学路を対象に、すでに40の街区に対して道路舗装工事を行い、学校前を歩行者専用空間としているというから驚きだ。それ以外の140の街区についても、クルマが進入できないように物理的な柵を設け、場所によっては通学の登下校時間帯には、通過交通を確認する監視員を置いて運用しているところもある。

 学校前を歩行者専用とすることにより、学校前を抜け道として利用していた車両の通過交通が実質ゼロとなり、自動車が原因で生じる子どもたちの交通事故リスクが激減する。

 また、学校前を通過していた自動車から発生する微小粒子状物質(PM2.5)を代表とする大気汚染物質もなくなることから、子どもたちの健康被害のリスクも大幅に低下することが期待されている。

 さらに、パリでは、学校前の歩行者専用空間に植栽を施すことを必須としており、安全対策だけではなく、ヒートアイランド対策にも取り組んでいる。

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