クルマから街を取り戻す! 事故とは無縁で、平和な新概念「ビルアペゼ」をご存じか【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(12)

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フランスが推進する新しいまちづくりの概念「ビルアペゼ」とは何か。まちをクルマから人に取り戻し、多様なモビリティが共存していくその取り組みに迫る。

スローなまちづくり先進都市ナント

ナントのゾーン20地区はライジングボラードで管理(画像:牧村和彦)
ナントのゾーン20地区はライジングボラードで管理(画像:牧村和彦)

 フランスのナント(都市圏人口65万人)は、ビルアペゼに10年程前から取り組んでいる先進都市のひとつだ。2027年には市内の70%の路線をビルアペゼとする目標を掲げており、ナントのまちなかを歩くだけで、ビルアペゼの思想を随所で感じ取ることができる。

 ビルアペゼを推進しているナントには、

・歩行者専用の空間
・ゾーン20の空間(出会いの空間)
・ゾーン30の空間

の三つタイプのビルアペゼが存在する。

 ゾーン30は、歩車は分離された構造であり、最高速度を30km/hとするだけではなく、車道を狭くする狭さく、ハンプなどの速度抑制策、自分の走行速度が表示される注意喚起の案内版など、クルマと歩行者や自転車との重傷事故を抑止するインフラの改編なども同時に実施されている点が特徴的だ。

 ゾーン20は、日本ではほとんどなじみのない取り組みだろう。原則、歩道と車道の明確な区分を設けず、最高速度を20km/h規制とし、規制速度だけではなく、歩行者や自転車を最優先とする点が特徴的だ。

 また、自転車レーンも道路上には明示しない点も大切なポイントだ。ゾーン20を走行する自動車は、地区に居住する人やホテルなどへの来訪者、荷さばき等の物流用の車両に限定されるため、結果的に、通過交通は流入しづらい仕組みとなっている。

 ナントでは、小学校の前の道路やまちなかの狭い道路などから導入している。ゾーン20は、地域の議員や住民の合意が得られた地区や路線が順次導入しているため、時間をかけながら丁寧に進めているとのことだ。

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