三菱商事・JR四国が「徳島県」のタクシー関連企業にわざわざ出資する理由
電話受注方式の生産性に着目

電脳交通の誕生には、同社代表の近藤洋祐氏の実家である吉野川タクシー(徳島市)が関係している。近藤氏は米国の大学を卒業後、帰国し実家の吉野川タクシーに入社。ドライバー経験を積んだあと、代表取締役に就任し、同社の業績をV字回復させた経歴を持つ。
地方の法人タクシーの7割が車両数十台以下の小規模事業者である。ほとんどのタクシー事業者は電話で配車を受注し、配車業務を自社で運営している。ドライバー不足に加えて、配車効率に課題があった吉野川タクシーでは
「お客さまの注文に対して受注できていたのは、7割ほど。3割はお断りせざるを得ない状況でした」
と近藤氏。
電話受注方式の課題は、必ずしも全ての電話が新規受注につながるものではないことだ。
「あと何分で来ますか」
「やっぱりキャンセルします」
といった問い合わせも10%ほどあるという。
こうした電話にシステムが自動応対できれば、電話回線に余裕を持たせることができる。工数を削減し、その分を新規受注に振り向けることも可能だ。
課題先進地にはテクノロジーが必須

徳島は全国での課題先進地といえる。県内のタクシー事業者の売り上げは全国最低水準。経営環境が厳しいなか、最短で状況を改善するには、テクノロジーの活用が必須と近藤氏は考えた。
そして2015年、吉野川タクシーで得た知見を同じような課題を抱える全国約6000の事業者に共有できれば、との思いから電脳交通は生まれた。
電脳交通のシステムを導入した事業者の多くは、その効果を感じている。当たり前のようにかかっていたコストが下がる一方、配車効率が上がるため営業効率は2倍、払うコストは3分の1になった事業者もある。
「システムを入れたことで、初めて見えたコストもある」
との声も上がっている。
地元の徳島で事業を続ける意味を、近藤氏は次のように話す。
「電脳交通のシステムは、家業の課題解決の過程で誕生しました。当社システムが説得力を持つのは課題先進地ならではの背景があり、またそれが一定の評価につながっていると認識しています」