三菱商事・JR四国が「徳島県」のタクシー関連企業にわざわざ出資する理由

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タクシー会社のDXを支援する電脳交通(徳島県徳島市)が、総額約12億円を調達した。同社には三菱商事やENEOS、JR東日本なども出資する。知られざる同社の力とは。

移動で困るのは高齢者だけじゃない

タクシー乗り場(画像:写真AC)
タクシー乗り場(画像:写真AC)

 タクシー会社のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する電脳交通が、総額約12億円を調達した(4月4日発表)。新規引受先は、

・JPインベストメント
・ENEOSイノベーションパートナーズ
・四国旅客鉄道
・沖東交通グループ
・三和交通

既存引受先は

・三菱商事
・第一交通産業
・エムケイ
・阿波銀行
・徳島大正銀行
・いよぎんキャピタル

となっている。

 電脳交通がユニークなのは徳島市の会社であることだ。地方に本社を置くスタートアップは多くない。過疎が進む地方で創業したのはなぜなのだろう。同社が注目される背景には、課題先進地から生まれた「持続性」への探求があった。

日本の総人口が12年連続で減少している。人口が集中する都市部と地方とで、その肌感覚は異なるだろう。地方都市から離れた地域の状況は深刻だ。地方はもともと鉄道駅がないエリアも多いが、1時間に1本のバスがない地域もめずらしくない。

 移動の主体が自家用車のエリアでは、高齢者がクローズアップされがちだ。しかし、困っているのは高齢者だけではない。そうしたエリアは、子育て世代も住みにくいのである。

 2021年度の厚生労働省白書によると、共働き世帯の割合は65%を超えている。子どもが学齢期になると塾や習い事をはじめる家庭は多いが、共働き家庭は子どもの時間に合わせて、付き添うのが難しい。筆者(筒井永英、コーポレートライター)の家もそんな共働き世帯だ。

 わが家から、塾や習い事などの商業施設が集まる市の中心部までは車で片道30分。習い事が1時間の場合、帰宅しても30分ほどで再び家を出ることになる。時間のロスが大きいため、そのまま待機する。前後に余裕を持って3時間ほど確保することになるが、毎週の付き添いは厳しい。そこでわが家は送迎サービスのある習い事を利用している。

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