空港と騒音問題 なぜ伊丹空港は存続し、広島空港はへき地に移動したのか?
長距離の高速移動に飛行機は欠かせない存在だ。そんな飛行機が発着する空港にまつわる社会問題といえば、いわずもがな“騒音”である。
大阪国際空港を巡る騒音訴訟
長距離の高速移動に飛行機は欠かせない存在だ。そんな飛行機が発着する空港にまつわる社会問題といえば、いわずもがな“騒音”である。
空港の騒音をめぐり長期にわたる裁判が行われたのは、大阪国際空港(伊丹空港)だ。1969(昭和44)年に周辺住民が
・夜間の使用差し止め
・将来の損害賠償
を求めて、国を訴えた大阪国際空港訴訟は1981年まで続き、関西新空港(現・関西国際空港)の設置が検討される端緒となった。
残念ながら、周辺住民が求めた上記ふたつの件は却下されている。一方、過去の損害については十分な被害防止措置を講じていなかったとして、国家賠償法2条における「瑕疵(かし)」にあたるとされた。この条文は、つぎのようなものだ。
「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる」
瑕疵とは法律上、なんらかの欠点や欠陥のあることを指す。これにあたるとされたことで、最高裁判決は、大阪国際空港を
「欠陥空港」
であると認めたものとする評価もある。
判決の影響は大きく、大阪国際空港では国と住民との間で調停が行われ、夜間の使用や発着回数の制限、住宅の防音工事などの対策が実施されることになった。