北西ヨーロッパへ侵攻 「ノルマンディー上陸作戦」成功のカギはいったい何だったのか

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「史上最大の作戦」と呼ばれる「ノルマンディー上陸作戦」では、ロジスティクスが重視された。しかしそれは、作戦成功のカギではなかったとの指摘がある。

ノルマンディー上陸作戦のロジスティクス――「ルールへの進撃」

 また、クレフェルトは同章で、ノルマンディー上陸作戦後のヨーロッパ大陸での戦い、特に1944年秋のいわゆる「ルールへの進撃」の可能性についてロジスティクスの観点から検討した後、この作戦の実施は不可能ではなかったとの結論を下している。

 また彼は、ノルマンディー上陸後の連合国軍によるヨーロッパ大陸反攻作戦でアメリカ軍のジョージ・S・パットンが成功した事実は、ロジスティクスを重視するあまり消極的になり過ぎていた連合国側の戦争計画に対し、決断の重要性を示す事例であると主張する。

 『補給戦』の第8章「知性だけがすべてではない」でクレフェルトは、再びノルマンディー上陸作戦の事例を取り上げ、この作戦の準備があまりにも細部にわたって行われたため、かえって作戦計画が前例を見ないほど保守的なもの、時として無気力なものにさえなった事実を指摘した後、連合国側が勝利したのは、あらかじめ準備されたロジスティクス計画を実施したからではなく、それを無視したからであると、改めて皮肉交じりに述べている。

おわりに

 なるほどノルマンディー上陸作戦は「史上最大」と言われるものの、実は1つの時期に上陸した兵士の数だけを考えれば、前年の1943年のシチリア島上陸作戦の方が大規模である。また、単一の作戦規模でも、ノルマンディー上陸作戦とほぼ同時期にソ連軍が東方戦線で実施した「バグラチオン」作戦の方が大きかった。

 しかし、その準備段階から参加した兵士の数や準備された膨大な物資の量、さらには、英仏海峡を越えての上陸作戦との構想やその後のフランス解放といった事実を考え合わせれば、まさに史上最大の作戦との表現にふさわしい。そして、ロジスティクスの側面においては、疑いなく「史上最大の作戦」であったのである。

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