別名「軍隊のアキレス腱」 実は戦術より重要な「軍事ロジスティクス」をご存じか

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「軍事ロジスティクス」という言葉はウクライナ侵攻以降、一般的に知られるようになった。今回はその言葉の意味するところについて解説する。

はじめに

トラックの整備を行う兵士(画像:ウクライナ国軍参謀本部)
トラックの整備を行う兵士(画像:ウクライナ国軍参謀本部)

 2月のロシア軍によるウクライナ侵攻以降、メディアはその実相を詳細に伝えているが、そうした報道のなかで、「軍事ロジスティクス」あるいは「兵站(へいたん)」といったやや専門的な言葉が使われるようになった。そこで、この小論では軍事ロジスティクスという言葉の意味するところについて、わかりやすく解説してみたい。

 その前に確認すべき点として、軍事作戦を計画する行為を

「あたかも真っ白なカンバスに絵を描くように」

考えている人々が多数存在するが、たとえ政治家や軍人が地図を広げて、どれほど壮大な構想を練ったとしても、それを支える基盤――軍事ロジスティクス――がなければ、しょせんは白昼夢にすぎないとの事実を挙げておく。つまり、

「カンバスの大きさを規定する」

のが、ロジスティクスなのだ。

 実際、戦争の歴史を振り返ってみれば、戦いの場所や時期、規模を少なからず規定してきたのが、ロジスティクスの限界あるいは制約だった事実を理解できる。

 軍事ロジスティクスの重要性を一言で表現すると、古代から戦争の様相は「戦略」(軍事作戦)よりも「ロジスティクスの限界」――兵站支援限界と表現される――によって規定されていたとなる。すなわち、ロジスティクスこそ戦争の様相、そして用いられる戦略(軍事作戦)を規定する大きな、時として最も大きな要因なのであり、戦争の勝利と敗北を決定付ける大きな要因だ。

 イスラエルの歴史家マーチン・ファン・クレフェルトの言葉を援用すれば、兵士として活動するのに必要なひとり1日当たり3000kcalの糧食をどれだけ前線に運べるか、その実現可能性が軍隊の行動、そして作戦を規定してきたのだ。

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