名門ブランドの下で行われるダンピング競争 静岡の観光バス横転事故から浮かび上がる、旅行業界の構造的病理
2022年10月13日、静岡県内で大型バスの横転事故が発生。死傷者を出す惨事となった。こうしたバス事故は8月にも起きたばかり。なぜ重大事故は後を絶たないのか。
10月13日、静岡で大型バスの死傷事故
またしてもバスの悲惨な事故が起こった。ツアー客を乗せた大型バスが、静岡県の「ふじあざみライン」でカーブを曲がり切れず、のり面に乗り上げて横転。乗客ひとりが死亡し、少なくとも20人が重軽傷を負った。
この日帰りツアーを主催していたのは「クラブツーリズム」。品質の高さを売りにする名門の旅行会社だ。しかし、バスを運行したのは美杉観光バスという会社。ここに旅行会社のブランドだけでは安全性を判断できない「怖さ」がある。
逮捕された運転手はブレーキが利かなくなったと供述している。これはフットブレーキの使い過ぎが原因で、フェード現象(摩擦ブレーキを多用すると制動力が低下する)が起きたのであろうと推測されている。
現場をよく知る他の大型バス運転手がメディアのインタビューに応え、この道は坂が長く続くため、スピードを落として慎重に走らなければならないと語っている。
美杉観光バスは埼玉県飯能市に本社を置き、東京や沖縄などに営業所を展開しているが大手とは言えない。
事故を起こした運転手は埼玉在住。年齢も26歳と若く、大型バスを運転した経験も長くなく、今回事故を起こした付近の土地勘もなかったのではないかと推測される。