名門ブランドの下で行われるダンピング競争 静岡の観光バス横転事故から浮かび上がる、旅行業界の構造的病理
2022年10月13日、静岡県内で大型バスの横転事故が発生。死傷者を出す惨事となった。こうしたバス事故は8月にも起きたばかり。なぜ重大事故は後を絶たないのか。
旅行会社の競争激化、責任厳格化を

ただし、今回の静岡県の事故については、「クラブツーリズム」というブランドのもとでツアーが販売されたところに消費者の判断の難しいところがある。このブランドであれば大丈夫だろうと考えるのはごく自然のことと思われるからである。
これまで見てきたように、主催者は名のある旅行会社だとしても、バスの運行を担っているのは旅行会社から受注を受けたバス会社であり、そのバス会社がどのような運用体制を取っているかは分からないのだ。
大手の旅行会社とはいえ、近年はネット上の旅行会社などとの競争が激しく、生き残りは容易ではない。そのために、少しでも収益を上げようと、安い見積もりを出してくるバス会社に発注することも出てくる。
この点においては、観光関連諸法規、特に旅行業法を見直し、バスの運行を発注する旅行会社の側の責任をより厳格化し、重くすることが求められるだろう。それもできる限り速やかに。そうでなければ、第2、第3の犠牲者が出ることは避けられないかもしれない。