名門ブランドの下で行われるダンピング競争 静岡の観光バス横転事故から浮かび上がる、旅行業界の構造的病理

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2022年10月13日、静岡県内で大型バスの横転事故が発生。死傷者を出す惨事となった。こうしたバス事故は8月にも起きたばかり。なぜ重大事故は後を絶たないのか。

守られぬ安全、背景に過酷な労働環境

高速道路(画像:写真AC)
高速道路(画像:写真AC)

 バスの安全運行の鍵となるのは、

・車両の整備
・運転手の質

だ。車両の面でも、中大型車の生産を行っている日野自動車の検査不正の問題などが取り上げられているが、現状においてより深刻なのは運転手の労働環境である。

 ダンピングの結果として運転者の労働時間が長くなり、十分な休息がとれない反面、賃金は上がらず、運転手の成り手がなかなかいないのだ。そのため、現職の運転手に大きな負担がのしかかっている。

 そして過労のために体調を崩し、事故を起こす。2022年8月22日(月)、名古屋市内から名古屋空港に向かう大型バスが高速道路上で分離帯に衝突し炎上、運転手を含むふたりが死亡した。

 この事故についても運転手が死亡したため、原因究明が困難となっているが、運転手が勤務するバス会社での労働環境がかなり過酷なものであることが分かってきている。そのことが事故に何らかの影響を及ぼしている可能性は否めない。

 これ以外にも、2012年4月に関越自動車道で側壁にバスが衝突して7人が死亡した事故でも、運転手のいねむり運転が原因であった。この運転手の場合、自己裁量ではあったが無理に仕事を重ねたための疲労によるものであった。

 バス会社間の行き過ぎた競争を抑制すべく、2013年、いわゆる格安バスとしての「ツアーバス」(旅行商品のような形で通常のバス運行を行うもの)が廃止されるなど、一定の改善措置はとられたものの、抜本的な事態の改善には至っていない。

 こうした状況下で、2022年10月から全国旅行支援が開始された。

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