「トラックドライバー = 底辺職」などとのたまう人間が、実は単なる世間知らずなワケ
本当に「底辺職」なのか
6月、ある就活サイトにトラックドライバーを含むいくつかの職種を「底辺職」だと名指しする記事が掲載され、インターネット上で炎上した。
そもそも職業で差別すること自体が論外と言わざるをえないが、内容的にも、底辺職の特徴として「同じことの繰り返し」だと言いながら、職種の例に「保育士」(恐らく毎日が非日常の連続だろう)を含めるなど、ピント外れな記事ではあった。
従って、あえて反論するに及ばないが、このような記事が出る背景には、世の中に
「運送業はブラック」
との固定観念が根強く存在しているということでもあるだろう。
もちろん、運送業の労働にはまだ改善すべき課題があるが、しかしながら上記のような世間のイメージは実態と大きく異なることも事実だ。今回の記事では、誤解されがちなドライバーの実態について考えてみたい。
是正が進む長時間労働
ドライバーが「ブラック」だと思われがちな最大の理由は、
「労働時間の長さ」
だろう。
確かにドライバーは、他の現業系の職種(製造や建設など)よりもかなり労働時間が長い傾向がある。
この背景には、法律上の問題がある。労働基準法の例外規定によって、ドライバー職は月間平均で80時間を超えるような残業も許容されている。この点は明らかに問題だが、行政も問題意識は共有しており、2024年に「他の職種並み」に是正される方向で法改正の作業が進んでいる。
一方、法律がどうあれ
「ルールなど守らないのではないか?」
「サービス残業が増えるだけじゃないか?」
と思われるかもしれないが、恐らくそうはならないだろう。これには、運送業特有の厳しい規制が関係している。
具体的に言うと、2010年代に入って以降、運送業のトラックには「デジタコ」などの「運行記録計」の装着が順次義務化されている(小型車などを除く)。運行記録計には「運転時間」や「速度」などが記録されるが、そのデータは改ざんができず、違法運行は必ず記録が残る仕組みになっている。
これに加え、行政当局によるチェックの仕組みも厳格化されている。運送業は全国で6万社に上るが、これに対し運輸局、トラック協会、労働局(労基署)が三つどもえとなって、定期的に監査・巡回指導を行っている。
確かに一昔前であれば、
「東京から九州まで不眠不休で運転させる」
というような過酷な労働を強いる会社もあったと思うが、以上のような仕組みによって、露見することなく違法運行を続けるのは非常に難しいのが実態だ。
現在では法律無視のような会社は一部の例外だと考えて間違いない。実際に、運送業における長時間労働の割合は大きく減少している。
是正が進む長時間労働
このように行政は長時間労働の是正を強めているが、皮肉なことにドライバー自身は必ずしも同じ意識ではない。図表に示す調査によると
「収入が増えるならもっと働きたい」
というドライバーが全体の4割以上に上っていることがわかる。
もちろん、残業が減って同時に収入も増えるのが全員にとってハッピーだと思うが、いずれにせよ、一般的なイメージと異なる「ドライバーの本音」が伺い知れるのではないだろうか。