名門ブランドの下で行われるダンピング競争 静岡の観光バス横転事故から浮かび上がる、旅行業界の構造的病理

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2022年10月13日、静岡県内で大型バスの横転事故が発生。死傷者を出す惨事となった。こうしたバス事故は8月にも起きたばかり。なぜ重大事故は後を絶たないのか。

インバウンド回復で運転手不足に拍車?

 これ以前の段階から、コロナ禍の落ち着きを受け、国内旅行需要は回復の兆しを見せていた。これからは秋の紅葉シーズンを迎え、全国旅行支援によって国内旅行需要は加速度的に回復、増加していくだろう。

 また、海外からの観光客に対しても、水際対策が緩和された。これに、日米金利差の拡大を受けた約30年ぶりの円安水準が加わり、インバウンド(海外からの旅行者)も飛躍的に回復・増加するだろう。

 この円安の進展によって、2019年末のコロナ禍以前の混雑状況以上の混雑が全国の観光地で見られるようになることはほぼ間違いない。

 そうなると、ツアー客を乗せる貸し切りバスの需要もいやおうなく高まってくるはずだ。国内需要も海外需要もコロナ禍前を上回るであろう。それに伴い、大型バスの運転者不足の問題もより深刻さを増すことになる。

 そして、現状における労働環境の問題などが解決されなければ、重大なバス事故は今後さらに多発することも覚悟しなければならない。

 では、我々はどう身を守ればいいのか。それは何よりも「安い」からといって飛びつかないことだ。

「安いものには何らかのからくりがある」

それが創意工夫によるものであればよいのだが、交通分野においては、それは往々にして労働コストの切り捨て、運転手などの犠牲の上に成り立っている場合が多い。

 このことは、ここまで述べてきた過去の大事故の例を見ればある程度納得してもらえるのではないかと思う。

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