「リチウム利権」の終焉? EV価格を左右するナトリウム量産――利益率25%の鉱山大国から主導権は奪還されるのか

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100億元を投じたCATLのSIB量産が動き出す。リチウム価格は短期で50%超変動し、上流の利益率は15~25%へ拡大した。だが2034年に向け市場は構造転換期に入る。資源優位から製造効率へ――電池覇権の行方を追う。

世界初の量産開始

長安啓源 A06(画像:長安汽車)
長安啓源 A06(画像:長安汽車)

 世界最大の車載電池メーカーである寧徳時代新能源科技(CATL)は2026年2月5日、中国の自動車大手・長安汽車と提携し、量産車として世界で初めてナトリウムイオンバッテリー(SIB)を搭載する電気自動車「Changan Nevo A06(長安啓源 A06)」を2026年内に発売すると発表した。

 CATLは2016年にSIBの研究開発に着手し、これまでに約100億元(約2.2兆円)を投じて約30万個の試験用セルを開発してきた。この規模の投資は、新技術への挑戦であると同時に、既存のリチウムイオン電池の生産網を将来にわたって生かすための布石でもある。SIBは研究段階を離れ、市販車に組み込まれる実用段階へと進むことになる。

 SIBは、リン酸鉄リチウム(LFP)バッテリー向けの既存設備を活用できるとされ、セル製造コストの低減が見込まれる。大規模な新規投資をともなわずにコストを抑えられる可能性がある点は、産業全体にとって小さくない意味を持つ。LFP設備を転用できるという事実は、SIBがこれまで築かれてきた製造基盤を土台に拡張される技術であることを示唆している。

 SIBの市場投入は、高止まりが続く電気自動車(EV)価格に影響を与える可能性がある。価格の壁が普及を鈍らせてきた現状を踏まえれば、コスト面の改善は看過できない要素だ。CATLの動きを契機に、車載電池は「リチウム一択」という状況から、用途に応じて複数の化学系を使い分ける構図へと移り始める。

 2026年の商用化は、資源の希少性に縛られてきた構図が緩み、製造基盤や供給網の競争力がより前面に出る段階への移行を意味する。電池の選択肢が広がることは、性能向上にとどまらず、市場全体の収益構造にも波及する。車載電池の競争は、ここで新たな局面に入ったとみてよい。

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