「リチウム利権」の終焉? EV価格を左右するナトリウム量産――利益率25%の鉱山大国から主導権は奪還されるのか
100億元を投じたCATLのSIB量産が動き出す。リチウム価格は短期で50%超変動し、上流の利益率は15~25%へ拡大した。だが2034年に向け市場は構造転換期に入る。資源優位から製造効率へ――電池覇権の行方を追う。
浮上する企業と沈む企業

SIBに適した電極材やハードカーボンなどの負極材、ガラス材料、バインダーを手がける部材メーカーには商機が広がる。とりわけセル本体以外の周辺素材を扱う企業に利益が波及しやすい。リチウム系では負極に比較的高価な銅箔が必要だったが、SIBでは正極・負極ともに安価なアルミ箔を使える。
材料の切り替えは、汎用金属の高度加工を強みとする企業に追い風となる。世界のSIB市場は2025年に約13.9億ドルと見込まれ、2034年には約68.3億ドルへ拡大する予測だ。この成長過程で、日本企業を含む素材メーカーにも広い供給余地が生まれ、上流で新たな存在感を示す企業が出てくる可能性がある。
低価格帯に軸足を置く新興EVブランドにとっても環境は変わる。参入の壁が下がるだけでなく、電池コストの抑制で生まれた資金をソフトウェア開発や車内体験の向上に振り向けられる。都市部での普及を後押しする条件が整う。
その一方で、高コストを前提に進められてきた鉱山開発は採算悪化の懸念が強まる。計画の凍結や縮小が増える可能性もある。長距離走行や高密度といった性能だけを追い、費用対効果を重視する流れに対応できない電池専業メーカーは、差別化が難しくなる。価格競争に巻き込まれ、市場の主流から外れ、特定用途に限られた販路へ押し込まれる局面も想定される。