「最強のエンジン技術」が重荷に変わる? 南ドイツ失速、スペイン北部躍進――なぜ「熟練のプライド」は変化の足枷となったのか
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欧州自動車産業で雇用の重心が変わる。南ドイツやチェコでは削減が進む一方、スペイン北部は2035年までに新規雇用増が見込まれ、人的資本の更新速度が地域競争力を決める時代が到来している。
勢力図が塗り替わる欧州自動車産業

2026年1月13日、欧州自動車工業会(ACEA)とスイスのAdecco Groupが共同でリポート「再教育の競争:欧州自動車労働力の転換加速(The Race to reskill: Speeding up the European automotive workforce transition)」を発表した。この報告は、電動化やデジタル化といった技術の転換だけでなく、労働力が地理的にどこへ移動しつつあるかという現実を、冷静な統計データを通して示している(日本語版は2月9日に公開された)。本稿では、とりわけ地域間格差という構造的な変化に焦点を当てる。
伝統的に欧州の車両生産を支えてきた南ドイツやチェコ、西スロバキア、西スウェーデンでは、今後、関連する雇用が減少すると予測されている。対照的に、
「スペイン北部」
では雇用の増加が見込まれるという。この逆転現象は、景気変動や単発の工場誘致の成否だけで説明できるものではない。過去の成功に依拠して築かれた高度なサプライチェーン網が、変化の局面では組織の柔軟な対応を妨げる要因になっているのだ。
産業の重心は、人的資本をどれだけ迅速に更新できるかという能力の差によって、着実に移動しつつある――。