「最強のエンジン技術」が重荷に変わる? 南ドイツ失速、スペイン北部躍進――なぜ「熟練のプライド」は変化の足枷となったのか
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欧州自動車産業で雇用の重心が変わる。南ドイツやチェコでは削減が進む一方、スペイン北部は2035年までに新規雇用増が見込まれ、人的資本の更新速度が地域競争力を決める時代が到来している。
南ドイツとスペイン北部の違い

比較の視点は、産業の成熟度と柔軟性の関係にある。
南ドイツは、完成車メーカーとサプライヤーが密集した典型的な産業集積地である。内燃機関を軸に築かれた技能体系は非常に高度だが、その完成度の高さが転換コストを膨らませる要因にもなっている。
内燃機関に特化した熟練の暗黙知は、新しい職域への移行に摩擦を生じさせる。既存の人的資産が強固であればあるほど、価値の下落を受け入れにくく、組織全体の適応の速度は自然と鈍る。
スペイン北部は欧州のなかでも後発にあたる。特定の過去技術に縛られていないため、産業の余白がそのまま新しい技能を受け入れる場となっている。雇用の増加が見込まれるのは、拠点としての絶対的な優位性というよりも、既存の産業遺産に縛られずゼロベースで人材構成を組める新規開発拠点としての合理性を示しているのだろう。
守るべき過去を持たない地域ほど、ソフトウェア中心の車両構造に素早く応答できる――この逆説が、現在の勢力図を塗り替えつつあるのだ。