「8割が離職を意識」の衝撃――自動車整備士は“3K”ではなく“低賃金”に絶望している
整備士の仕事は高度化する一方、待遇は据え置かれたままだ。調査では約8割が離職を意識。専門職の価値が賃金に反映されない歪みが、車社会の基盤を静かに揺らしている。
人手不足の連鎖

人手が足りないという声は、ここ数年、どの工場や店舗でも当たり前のように聞かれるようになった。欠員が出てもすぐには埋まらない。そのしわ寄せは、そのまま残っている人にのしかかる。
ひとりが抱える仕事の量は増え、日々の業務は詰まり、気づけば余裕がなくなっている。負担が重くなれば、辞める人がまた出る。その穴をさらに少ない人数で埋める。そんな循環が、現場のあちこちで繰り返されている。
兼業で働く整備士を対象にした調査では、「労働時間が長い・残業が多いなど、労働環境が悪いため」と答えた人が35.3%にのぼり、上位に位置した。数字は淡々としているが、日常の実感に近い。忙しさが一時的な波ではなく、常態になっていることがうかがえる。
こうした環境では、腕のある人ほど早く動く。他の業界でも通用する知識や技術を持つ人材ほど、より良い条件を求めて外へ出ていく。結果として、現場に残るのは人手だけでなく、教える側の時間や気持ちの余白まで削られた状態だ。新人を育てる余裕がなくなり、ベテランが長年かけて身につけてきた判断や勘どころも、十分に引き継がれないまま消えていく。
整備士が足りないという現象は、採用がうまくいかないという話だけでは収まらない。人が抜け、その穴を埋めきれず、さらに余力を失っていく。その積み重ねが、職場の土台を弱らせている。表からは見えにくいが、内部で少しずつ進むほころびが、いま確実に広がっている。