「8割が離職を意識」の衝撃――自動車整備士は“3K”ではなく“低賃金”に絶望している

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整備士の仕事は高度化する一方、待遇は据え置かれたままだ。調査では約8割が離職を意識。専門職の価値が賃金に反映されない歪みが、車社会の基盤を静かに揺らしている。

待遇への不満

自動車整備士イメージ(画像:写真AC)
自動車整備士イメージ(画像:写真AC)

 理由は、調査結果を見ればほぼ読み取れる。「やりがいを感じるが、賃金は不十分だと感じる」と答えた層は、専業で56.5%、兼業では65.5%に達した。半数どころか、過半が同じ違和感を抱えている計算になる。さらに、辞めたいと考える具体的な理由のトップは「賃金への不満」で、専業34.9%、兼業40.7%だった。これに「休日が少ない」「休暇が取りづらい」「労働時間が長い・残業が多い」といった項目が続く。現場の声は、かなり現実的だ。

 日本自動車整備振興会連合会の実態調査をたどれば、平均年収そのものは、2019年度の392万円から、

・2020年度:396万円
・2021年度:399万円
・2022年度:404万円
・2023年度:417万円

を経て、2024年度には425万円へと、年々引き上げられてきた。だが、この緩やかな右肩上がりの数字も、現場に漂う閉塞感を打ち破るには至っていない。上昇の歩み以上に、

・生活実感としての厳しさ
・技術の高度化にともなう負担増

が勝っているのだ。やりがいがあるかどうかと、暮らしていけるかどうかは別の話で、両者は置き換えがきかない。なお、「令和6年分民間給与実態統計調査」によると、年間を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円(男性は587万円、女性は333万円)となっている。平均と比べて11%低いのが現状だ。

 整備士が身につけている技能の幅を思えば、なおさらである。機械の構造を理解し、電気系統を扱い、電子制御の不具合も追う。いまの車両はそれらが一体化しているため、現場では三つを同時に扱う力が求められる。この手の技能は、製造業やロボット関連の分野でも評価が高い。実際、別の業界に移れば条件が上がるケースは珍しくない。

 そうなると、整備の現場に残ること自体が、個人にとって経済面で不利に働くという状況が生まれる。腕を磨くほど、ほかに行き先が増える。より良い待遇を求めて動くのは、感情というより判断に近い。転職が「逃げ」ではなく、選択肢のひとつとして合理的に浮上してくる。

 これまでに投じてきた学習や資格取得の負担を考えると、その見返りは決して大きいとはいえない。努力に対する報酬が釣り合わないままでは、いくら仕事に愛着があっても、生活の不安が先に立つ。日々の達成感があっても、家計の心配が消えない状態では、気持ちは長く持たないだろう。

 整備士が足りない理由を、本人たちの覚悟や意識の問題に帰すのは無理がある。むしろ、労働市場のなかでこの職種の価値が十分に評価されていないこと、その歪みが数字となって表れている。現場の努力では埋めきれない差があり、それが人材の流出を招いている。そう受け止めるほうが、実態に近いように思える。

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