「8割が離職を意識」の衝撃――自動車整備士は“3K”ではなく“低賃金”に絶望している
入職の動機とやりがい

整備士を志した理由として最も多かったのは、「自動車が好きだったから」という答えで、割合は56.5%にのぼる。仕事のやりがいについても傾向ははっきりしている。「車が直った瞬間の達成感」が46.2%、「お客様からの感謝の言葉」が42.8%、「技術や知識が積み重なっていく実感」が42.4%。いずれも、日々の業務の中身に直接結びついた動機ばかりだ。数字を見るかぎり、職務への納得感はかなり高い。
本来であれば、これほど仕事と本人の志向が噛み合っていれば、長く続ける人が増えてもおかしくない。好きで始め、成長の手応えもある。感謝の言葉も返ってくる。働く理由としては十分にそろっているように思える。
ところが現場の定着状況は、そうした期待どおりには進んでいない。背景には、この仕事が長いあいだ抱えてきた慣習がある。整備士の「車が好き」という気持ちが、いつの間にか前提とされ、それが人手を支える土台のように扱われてきた。好きでやっているのだから多少の我慢はきくはずだ、という空気がどこかに残っている。
結果として、十分とはいいにくい報酬や待遇を、やりがいで埋め合わせる構図が続いてきた。精神的な満足があるのだから、賃金の伸びが鈍くても仕方がない、という考え方である。そうしたやり方が通用した時代もあったのだろうが、いまの生活水準や価値観とは噛み合わなくなっている。
どれほど強い思いで入職しても、生活が楽にならない現実に直面すれば、気持ちは少しずつ削られていく。修理をやり遂げた達成感があっても、将来の家計や働き方への不安が常に頭をよぎる。好きだから続けられる、という言葉だけでは支えきれない場面が増えている。
技術への適性があり、仕事の中身にも魅力を感じている人材が集まっている。それでも離職を考える人が多いという状況は、どこかちぐはぐだ。個人の情熱に頼る運営と、現実の暮らしとの間にできた溝が埋まらないまま、現場の人たちがそのはざまで揺れている。そうした歪みが、離職意向の高さという形で表に出てきているように見える。