自動運転バスは本当に安全? 1.1億円超の高コスト・赤字リスクが示す「運用&統治」の辛らつ現実
自動運転バスは2032年に向け市場拡大が見込まれる一方、米国や日本で事故や実証中断が相次ぐ。車両価格は1台約1.1億円、財源の約9割は国費補助。技術より先に、安全・制度・採算の設計が問われている。
期待先行の自動運転バス市場

世界各地で自動運転バスの導入が進んでいる。市場調査では、2024年から2032年にかけて業界成長が一段と加速すると見込まれている。背景にあるのは、環境負荷の低減や運行効率の向上を求める公共交通への需要の高まりだ。
しかし、普及の歩みは順調とはいい切れない。2020年2月25日、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、フランスのEasyMileが開発した自動運転シャトルバスについて、乗客輸送を禁止する命令を出した。前日、オハイオ州コロンバス市で車内の転倒事故が発生したことが直接のきっかけである。
当該車両は、米国16都市の大学や空港、交通機関などで実証実験が行われていたが、2020年5月14日まで、すべての都市で旅客運行が一時停止された。NHTSAはこれ以前にも、2018年に安全基準を満たしていないとして、同社の自動運転スクールバスに運行中止を命じている。
日本でも自動運転バスの導入は加速しているが、課題は顕在化している。2025年8月、東京都八王子市で実証実験中の自動運転バスが事故を起こし、3人が軽傷を負った。事故後の調査では、開発段階からシステム上の不備が存在していたことが明らかになっている。
同年11月には、埼玉県さいたま市が実施していたJR北浦和駅西口から埼玉大学間の実証実験で、法定点検が行われていなかったことが判明した。これを受け、市は実証実験の中断を発表した。
自動運転バスの導入を進める自治体や事業者には、先端技術を優先する姿勢だけでは不十分だ。事故を想定したインフラ整備や制度設計に加え、持続可能なビジネスモデルをどう構築するかが問われている。技術開発と同時に、運用と統治の設計が成否を左右する局面に入ったといえる。