自動運転バス「完全無人化」は幻想だった? 東京の複雑環境が暴く「誰も読めない」運行コストの真実

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自動運転バスの普及は、人員削減を可能にする一方で、安全・遠隔監視・乗客サービスなど多層的業務は依然として人が担う。全国9割以上の路線バス赤字を背景に、導入コストや専門人材の確保、ランニング支援の必要性が経営と政策の課題として浮かび上がる。

自動運転バスの現実

路線バス(画像:写真AC)
路線バス(画像:写真AC)

 自動運転バスの時代に人間は不要になるのか。結論からいえば、人員は削減できるが、完全になくなることはない。消費者のなかには、「自動運転 = 車が自律的に走り、無人運行できる」というイメージが強い。しかし現実は違う。

 レベル4の自動運転は、特定条件下でシステムが全ての運転タスクをこなし、人が関与しなくてもよい状態を指す。国内では

・福井県永平寺町の鉄道廃線跡
・東京都大田区の羽田イノベーションシティ
・長野県塩尻市

などで運行事例がある。市民の間でも自動運転の進化を感じる機会は増えている。

 ただし、運行環境には厳しい制約がある。実験的に走行しているケースは低速で、限定区域内、交通量も少なく、平坦で単純な道路構造が前提だ。つまり

「最適化された条件下でのみ運行が成立している」

に過ぎないのだ。東京圏の一般路線バスのように、

・狭い道
・渋滞
・歩行者混在

の環境で同じ運行ができる保証はない。現状は

「できているように見える」

に過ぎず、実際にはコストや人的サポートが不可欠であり、規模を拡大した際の費用は予測が難しい。完全無人化に対する社会的・心理的な不安は根強い。日本では鉄道やバスに対する安全志向が強く、無人運転の受容性は低い。

 路線バスの専門家である筆者(西山敏樹、都市工学者)は各地の自動運転実証実験に参加し、モニター市民に取材してきた。

「いざというときに助けてくれる人が乗ってないの?」
「障がい者をサポートしてくれる人、誰もいないの?」
「緊急時の連絡、どうやって取ればいいの?」

といった不安が、高齢者を中心に多く聞かれた。

 緊急対応や乗客間のトラブル、高齢者・障がい者・子どもへの支援など、運転以外の人的付加価値が強く求められている声もある。給与が多少下がっても、

「車掌的なスタッフを残してほしい」

という要望が出る可能性が高い。現在の実証実験でもスタッフが乗車しており、その存在を安心材料として認識する市民は多い。

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