自動運転バス「完全無人化」は幻想だった? 東京の複雑環境が暴く「誰も読めない」運行コストの真実
自動運転バスの普及は、人員削減を可能にする一方で、安全・遠隔監視・乗客サービスなど多層的業務は依然として人が担う。全国9割以上の路線バス赤字を背景に、導入コストや専門人材の確保、ランニング支援の必要性が経営と政策の課題として浮かび上がる。
データ活用とシミュレーションの重要性

だからこそ重要になるのは、
・経営シミュレーションの研究
・政策の介入
である。繰り返すが、現状、自動運転化で人件費が削減できるという議論は、前提に過ぎない。技術的な実証運行は進むが、そこで得られたビッグデータの活用はほとんど行われていない。
「自然科学系と社会科学系の研究を融合させる」
ことが、自動運転分野でも必要だ。実証運行が進み、次のデータが揃えばモデリングやシミュレーションが可能になる。
・バス1台あたりの運行コスト
・管制センターの人件費
・保守費
・センサー交換サイクル
などが明確化すれば、コスト構造の見通しも立つ。しかし、政策研究機関、大学、交通事業者が共同で研究する土壌はなく、アウトプットもほとんどないのが現状だ。これは大きな損失である。
普及にはランニングコストへの支援が不可欠だ。現在の補助金は導入時の初期投資が中心である。モータリゼーションや新型コロナ禍で苦境にあるバス事業者を支援するには、地図更新、車載センサー、管制センター人材育成、車両更新など運用コストへの恒常的なサポートが必要である。筆者はこれまで、
「全国の路線バス事業の9割以上が赤字である」
ことも度々訴えてきた。人件費の高さに加え、乗りやすい車両や低公害車両の導入も求められる。自動運転は、場合によってはさらなる出費を生む可能性がある。
「誰も読めない出費」
に対する不安が強いのも自然である。ランニングコストへの恒常的支援がなければ、地方での自動運転導入は難しく、東京ですら自立的な運営は厳しい状況なのだ。