EVだけで「脱炭素」は可能なのか? マツダが挑む「エンジン車延命」――燃料・制度の壁を越える挑戦とは
マツダが開発したCO2回収装置MMCCは、微細藻類由来燃料と組み合わせ走行中にCO2を吸着。国内2136万台のエンジン車市場に新たな脱炭素の選択肢を提示し、EV依存に揺さぶりをかける。
地域差が生む米国での普及機会

欧州連合(EU)は2035年以降、一部条件下で合成燃料を使用する新車に限り、エンジン車の販売を容認する方針に転換した。これにより、MMCC普及の土壌が徐々に整いつつある。一方、中国では石炭火力発電の比率が約6割に達し、EV走行が必ずしも環境優位にならない側面がある。このため、代替方式に対するニーズは比較的高いとみられる。
米国では広大な国土ゆえに地域差が顕著だ。MMCCとバイオ由来燃料の組み合わせが地方の普及モデルとして需要に合致すれば、ビジネスモデルとして成立しやすい。
マツダはロータリーエンジンを搭載したプラグインハイブリッド車(PHV)とMMCCを組み合わせ、新たな高付加価値ゾーンの形成を目指している。「走りの価値」と「環境性能」の掛け算は、比較的小規模なブランドが差別化を図る上で合理的な戦略だ。EVシフトに出遅れた状況を逆手に取り、未開拓であるエンジン車の環境領域を切り開く構造となる。今後、いかに軌道に乗せるかが焦点となる。
自動車産業における脱炭素化の目的は、CO2排出量を削減し地球温暖化対策を強化するとともに、持続可能な社会の実現に寄与することにある。そのため、環境に配慮した車両の開発・販売を進める必要があり、これにより市場競争力を維持できる。
しかし、CO2削減の手段はEVだけに限られない。燃料の生産段階でCO2を吸収し、走行中も排出CO2を回収するMMCCは、EV依存の政策構造に新たな選択肢を提供する。
MMCCの導入で技術方式がEVとエンジン車に複線化すれば、ユーザーやメーカー、行政の判断軸は総排出量の実績に一本化される可能性がある。その意味で、MMCCは脱炭素化に新たな評価軸を加える装置と位置づけられる。