「アドトラックの風俗広告」何が問題なのか?日給5万円に誘引される若年層・貧困層、労働市場の歪みを考える

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福岡市内で延べ202台確認、うち97%が風俗広告を掲示するアドトラック。都市景観や交通安全への影響に加え、誇張広告は労働市場や社会保障制度にも波及し、市は規制強化を検討している。

アドトラック規制の現状

アドトラック(画像:写真AC)
アドトラック(画像:写真AC)

 トラックやバスに大型広告を掲示して走るアドトラックは、都市景観や交通安全への影響だけでなく、情報の偏りが個人の判断を誤らせ、労働市場や社会保障制度にまで波及する問題を抱えている。福岡市はこうしたアドトラックへの規制強化に乗り出す方針を固めた。毎日新聞が2025年9月12日に報じた。

 現行条例では、市内に「使用の本拠」がある車両だけが規制対象となる。しかし実態調査では、多くの広告車両が市外に本拠を置き、条例の網の目をすり抜けている状況が明らかになった。市内を走行しても規制が及ばない車両が多数存在するため、現場では都市景観や市民の安全面で問題が顕在化している。

 福岡市は2026年3月までアドトラックの実態調査を実施中で、調査期間の一部である4~7月だけでも32回の観測で、延べ202台が確認された。そのうち

「97%」

にあたる196台が風俗関連の広告を掲示していた。ナンバーが確認できた168台の本拠はすべて市外で、千葉県が120台、埼玉県が3台、福岡県内でも粕屋町など市外が45台に上った(同紙)。

 現行条例では、市内に屋外広告を設置する場合は許可が必要である。しかし移動をともなうアドトラックは対象外であり、市外本拠の車両は福岡市内を走行しても規制が効かない状況が続いていた。

 市は条例改正により、市内走行時は本拠の所在にかかわらず許可を義務付ける方向で検討している。ただし、特定の広告内容で規制することは、憲法上の

「表現の自由」

との兼ね合いで現状では困難であり、課題が残る。東京都や名古屋市も同様の規制強化を検討しており、アドトラック広告の社会的影響への注目は全国的な潮流となりつつある。

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