5.2兆円vs1.7兆円!北陸新幹線「米原ルート」で浮上する“第3の選択肢”はなぜ「新幹線より賢い」のか?

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北陸新幹線の米原ルート採用で注目される小浜市の扱いに異議が唱えられている。かつて期待された「琵琶湖若狭湾快速鉄道」の中速鉄道化は、約20kmの新線整備で大阪~小浜間を最速1時間11分に短縮。乗り換え不要で新幹線案とほぼ同等の利便性を実現し、地域振興に現実的な代替策として再評価が必要だ。

新幹線に迫る中速特急

若狭湾快速鉄道想定時刻表 データイム編小浜方面(1時間サイクル)(画像:北村幸太郎)
若狭湾快速鉄道想定時刻表 データイム編小浜方面(1時間サイクル)(画像:北村幸太郎)

 これらの施策を実施すれば、小浜ルートの新幹線整備とほとんど変わらない所要時間で、大阪と小浜を結ぶことができるとわかった。

 在来線を活用すれば、他の路線にも乗り入れが可能になる。このため、時速180kmで運行する特急については、大阪発着と関空発着の2系統を想定する。仮称として、それぞれ「特急スーパー若狭」「特急スーパーはるか」として本稿では記載する。

 両特急の停車駅は基本的に、小浜、上中、近江今津(敦賀方面列車との接続のため停車)、京都、新大阪、大阪を想定している。

 加えて、特急スーパーはるかについては、滋賀県が関空アクセスを理由に、大津市内の大津京駅に停車を求めてくる可能性がある。これについては受け入れてもよいだろう。さらに、JR西日本が計画している日中時間帯の特急はるかの山科延伸も踏まえ、大津京と山科を加えたうえで、停車駅を設定している。

 この条件で計算した結果、特急スーパー若狭は京都~小浜間を最速44分、大阪~小浜間は最速1時間11分で結ぶことができる。しかもどちらも乗り換えは不要だ。

 これに対し、北陸新幹線を使う場合は、新大阪と小浜市内の新駅(仮称:新小浜)で2回乗り換える必要がある。国土交通省が2017年に試算したところによると、新大阪~新小浜間は約38分。ただし、乗り換え時間(新大阪で10分、新小浜で7分)を加えると、京都~小浜は1時間13分、大阪~小浜は乗り継ぎがスムーズでも1時間2分程度になる。

 つまり、中速鉄道案と比べて所要時間の差は9分しかない。しかも、新小浜での乗り換えタイミングが悪ければ、新幹線の方が遅くなるケースもあり得る。現在の所要時間2時間41分に対し、特急スーパー若狭では1時間11分と、1時間30分もの短縮になる。

●特急スーパー若狭・主な区間の所要時間
・小浜~上中(10.7km):7分
・上中~近江今津(19.8km):9分
・近江今津~京都(58.7km):26分
・京都~大阪(42.8km):26分(新大阪停車を含む)
・各駅停車時間:1駅あたり1分
・合計所要時間:1時間11分
→ 現行:2時間41分 → 短縮効果:1時間30分
→ 京都~小浜:2時間13分 → 44分(1時間29分短縮)

大阪から小浜までは半径100km圏内に収まる。このため、新幹線では新大阪・新小浜での乗り換えが発生するが、中速鉄道ならそのロスがない。少し速度が遅くても、実際の移動時間では中速鉄道のほうが合理的といえる。

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