なぜ中国は「EVバッテリー」を大量廃棄するのか? 非正規業者「18万社」の現実とは

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中国でEV普及に伴う廃バッテリーが急増し、2025年には100万個に達する見通しだ。制度整備が進む一方、非正規ルートのまん延が環境負荷を拡大し、リサイクル市場の成長と課題が交錯している。

電池廃棄の逆説

中国(画像:Pexels)
中国(画像:Pexels)

 中国では電気自動車(EV)の普及が進む一方で、使い終えたバッテリーの廃棄が急増している。

 脱炭素社会をめざすなかで、環境にやさしいはずの電気自動車が新たに環境負荷の課題を生んでいる。

 国は廃棄物を管理したいと考えるが、思うように仕組みが機能せず、現実とのずれが浮き彫りになっている。そこには表に出にくい事情がある。

都市鉱山争奪戦と環境リスク

中国でのNEV(新エネルギー車両)保有台数の推移(画像:日本貿易振興機構)
中国でのNEV(新エネルギー車両)保有台数の推移(画像:日本貿易振興機構)

 筆者(中嶋雄司、自動車ライター)が上海を訪れたとき、街を音もなく走る緑色ナンバーの車が目に入った。中国で急速に普及しているEVだ。通常の青色ナンバーとは異なり、緑色ナンバーは税制面で大きな優遇を受けている。

 この数年で、中国の都市風景はEVによって大きく変わった。政府の手厚い補助金と環境意識の高まりを背景に、中国は世界最大のEV市場へ成長した。しかし今、新たな課題が迫っている。

 それが、膨大な「廃バッテリーの波」である。中国のEVシェアは年々拡大し、2015年前後に生産された第一世代の車が、5~8年とされるバッテリー寿命を迎えつつある。これからEV由来の廃バッテリーが爆発的に増えるのは避けられない。

 廃バッテリーの増加は同時に巨大なビジネスの芽でもある。レアメタルを取り出すリサイクル産業は「都市鉱山」と呼ばれ、今後の成長市場として多くの企業が激しい競争を繰り広げている。

 ただし処理は容易ではない。リチウムやコバルトなど価値ある金属を含む一方、誤った方法で解体すれば環境を汚す危険な廃棄物となる。実際に不適切な処理による発火事故や汚染は各地で問題化している。

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