西九州新幹線「佐賀県を通らないルート」実現可能か? 有明海ルートで博多~長崎10分短縮…浮上した奇策の経済効果と課題とは
海上区間の費用負担問題

佐賀県の「陸上を通らない」という表現には理由がある。実際、有明海ルートでも海上で10kmほど佐賀県を通過する。しかし、海上ならトンネル出入口がある県だけで建設費を折半するのではないかという疑問があるだろう。そこで、海上で県境を二度通過する場合の建設費負担について、国土交通省鉄道局幹線鉄道課に問い合わせてみた。
●質問
「整備新幹線の建設に関して、海上を通過する場合、海上にも県境があると思うが、例えばA県→C県に通したいときに、間にちょっとだけB県を通過する場合にB県にも建設費負担は発生するのか」
●回答
「ご案内のように、全国新幹線鉄道整備法上、整備新幹線の建設費の地方負担については、「当該新幹線鉄道の存する都道府県」が負担することとされています。前例もなく個別具体の状況がぱっと思い当たらないので具体的なお答えはできかねますが、この法律に基づき対応していくものと考えております」
つまり、海上を通過する部分でも、その費用は佐賀県が負担することになるようだ。解決策としては、県境を変更するか、佐賀県区間を長崎県が負担する形にする方法が考えられる。しかし、有明海ルート全線の建設費は、フリーゲージトレインを前提に計画されたものであり、国の責任で負担すべきではないだろうか。
なお、大牟田~合流地点の8.5kmについては、福岡県と熊本県の荒尾市にメリットがあるため、負担を求めても良いだろう。
長崎新幹線にともなう路線再編
長崎新幹線有明海ルートが完成すれば、博多~長崎のメインルートはそちらに移る。そうなると、既存の西九州新幹線諫早~武雄温泉間はどう扱うかという問題が出てくる。
筆者は、本数は減るかもしれないが、これを残すべきだと考えている。新大村駅近くには車両基地があり、回送や通勤利用を目的とした便の運行もできる。また、長崎~佐賀間の利用者にも必要だろう。西九州新幹線の名前のままで運営し、長崎新幹線と区別するのがよい。特に、鉄道空白地帯だった嬉野温泉には不可欠な路線だ。
ただし、武雄温泉での乗り換えがあるため、レールを追加して在来線特急が乗り入れるようにするという要望が出るかもしれない。それが実現すれば、中速鉄道としても活用可能だ。