西九州新幹線「佐賀県を通らないルート」実現可能か? 有明海ルートで博多~長崎10分短縮…浮上した奇策の経済効果と課題とは

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長崎新幹線「有明海ルート」の提案は、佐賀県の反対を回避し、福岡県とのアクセス改善を目指す新たな道を開く。しかし、建設費用や技術的課題など解決すべき問題も山積している。

佐賀空港案に浮かぶ非効率

西九州新幹線(画像:写真AC)
西九州新幹線(画像:写真AC)

 新幹線のルートがなかなか決まらない。この問題は、最近話題になっている北陸新幹線ばかりが注目されているが、西九州新幹線の存在も忘れてはならない。

 福岡都市圏に近い佐賀県が、フル規格での整備に原則反対している。そのため、国は妥協点を探るべく、当初案の佐賀駅ルートのほか、佐賀市北部をかすめるルートや佐賀空港を通るルートなどを示し、佐賀県と協議を続けている。しかし、いまだに合意には至っていない。長崎~武雄温泉間の部分開業から、すでに2年が経過した。

 現在示されているルートのなかでも、特に佐賀空港を経由する案は大きく遠回りになる。そのため、福岡県内からは「筑後船小屋を通せ」という声や、「久留米を通すべきだ」という声が上がっており、誘致合戦が始まりつつある。2024年3月には、福岡県南部の七つの商工会議所が合同で「西九州新幹線福岡県南乗り入れ誘致期成会」を立ち上げた。

 しかし、もともと長崎~武雄温泉間のルートもやや遠回り気味だ。そこからさらに迂回すれば、新幹線というより、もはやお台場の新交通システムやコミュニティーバスのような路線になってしまう。

 そんななか、誰も注目していない不思議なルートがある。市民による自治体への投書や、X(旧ツイッター)上の投稿から見つけた。そのルートとは、佐賀県を通らず「有明海を突っ切る」というものだ。

 この案は、Merkmalの兄弟メディア「乗りものニュース」でも紹介されている。乗りものライターの安藤昌季氏が、「このままでは乗り換えが永久固定… 西九州新幹線を全通させるには “全く別ルート”の方がメリット大?」という記事で取り上げていた。

 今回は筆者(北村幸太郎、鉄道ジャーナリスト)なりに、この「有明海ルート」の整備効果と課題を整理したい。既存の西九州新幹線とは切り分け、実質的には長崎県専用の新幹線と位置付ける。そのため、「長崎新幹線有明海ルート」として考えてみる。もちろん、すでに開通している区間や各自治体の負担をどうするかといった議論も含めて考察する。

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