西九州新幹線「佐賀県を通らないルート」実現可能か? 有明海ルートで博多~長崎10分短縮…浮上した奇策の経済効果と課題とは
長崎新幹線「有明海ルート」の提案は、佐賀県の反対を回避し、福岡県とのアクセス改善を目指す新たな道を開く。しかし、建設費用や技術的課題など解決すべき問題も山積している。
1時間半待ち解消の新幹線改革

長崎新幹線有明海ルートは、西九州新幹線の諫早駅から分岐し、諫早市東部から有明海を海底トンネルで越え、大牟田市付近で九州新幹線に接続する案である。筆者の考えとしては、既存開業区間がサンクコスト(努力しても回収できないコスト)化するのは避けられないとしても、いくつかのメリットがあると感じている。
まず最大の利点は、佐賀県の陸地を通らない点だ。このため、佐賀県内に並行在来線の問題が生じない。そもそも現在の武雄温泉~新鳥栖間にしても、佐世保行きの特急が走っている以上、経営分離されるかどうかは怪しい。
仮に有明海ルートが開業しても、西九州新幹線が存続すれば、佐賀駅へのアクセスのためにリレーかもめは残る可能性が高い。本数は減るかもしれないが、在来線そのものは維持されるだろう。
ここまでは佐賀県側のメリットだが、有明海の対岸、福岡県側にも大きな利点がある。大牟田駅は、九州新幹線の開業によって特急停車駅としての地位を失い、利便性が大きく低下した。現在は市郊外にある新大牟田駅を使う必要があり、しかも日中は1時間半に1本しか新幹線が停まらない。
長崎新幹線有明海ルートが実現すれば、大牟田駅に新幹線を通すことが可能となり、かつての特急停車駅としての地位を取り戻すことができる。大牟田での乗り換えによって、隣接する熊本県荒尾市の住民も恩恵を受けるはずだ。
さらに、現在誘致合戦が進む筑後船小屋駅や久留米駅もルートに組み込める。これにより、久留米や久大本線沿線から長崎へのアクセスが向上する。加えて、博多~筑後船小屋間の運行本数が増えることも期待できる。これらは従来の佐賀駅ルートでは得られなかったメリットである。