かつて成田を埋め尽くした「赤い翼」! 太平洋路線の名門「ノースウエスト航空」を覚えているか? 消滅から15年、その栄光と挫折とは

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ノースウエスト航空は、日本とアジアを結ぶ重要な架け橋として、成田空港での赤い尾翼の大型機で広く知られた。1980年代以降の競争激化と航空自由化の中、2008年のデルタ航空との合併によりその歴史は幕を閉じたが、成田のハブ機能は依然として影響力を持ち続けている。

米国とアジア結ぶ新たな航空需要の波

ノースウエストの閉鎖前最後のカラーリング(2004~2010年)をまとったサンノゼのA320-212型機(画像:Dylan Ashe)
ノースウエストの閉鎖前最後のカラーリング(2004~2010年)をまとったサンノゼのA320-212型機(画像:Dylan Ashe)

 デルタ航空の撤退により、米国の航空会社が運航していた日本~アジア各都市への以遠権路線は歴史のなかに消えていったかと思われた。

 しかし、2024年以降、再びその動きが現れた。デルタ航空に先駆けて以遠権路線から撤退していたライバルのユナイテッド航空が、成田空港を再びハブとして利用し、日本発着の以遠権路線を拡大しようとしているのだ。ユナイテッド航空は2024年10月27日、成田空港からフィリピン・セブへの路線を開設した。2025年には台湾の高雄、モンゴルのウランバートル(季節運行)、パラオのコロールへの路線も運航を開始する予定だ。これらの路線は、サンフランシスコやロサンゼルス、ニューアーク、ヒューストンなど、ユナイテッド航空が成田空港から運行する便への接続を兼ねており、使用する機材はグアムから成田に移されたボーイングB737だ。

 今日では航空機の性能向上が進み、米本土から西海岸を中心に東アジアや東南アジアへの路線が多く就航している。そのため、かつてのように大型機で東京からアジアの大都市を結ぶ形ではなくなったが、

「米本土からの直行便を開設するほどではないが、成田にハブを置けば採算が合う」

といった規模の都市への就航を通じて、米本土~アジア間の需要を補完する役割を果たしているといえるだろう。実際に先行して開設されたセブ線は、ANAと合わせれば米国のワシントンD.C.を除くユナイテッド航空全てのハブ空港にアクセスできるという利便性があり、すでに好調なようだ。

 一方、提携先を持たずにハブをソウルに移したデルタ航空は、ユナイテッド航空のような展開は難しいと思われる。しかし、韓国の航空会社は日本の航空会社に比べて国際線路線網が広いため、2025年2月現在でもソウルからアジア各地へのデルタ航空の以遠権路線は運航されていない。また、北米東海岸路線を開設する際、最短距離ではロシア上空を通過する必要があるが、ロシアのウクライナ侵攻による経済制裁で上空利用ができなくなり、遠回りを余儀なくされている。そのため、デルタ航空はボストンやニューヨークといった米国北東部のハブ空港への路線をソウルから開設できていない。

 このような制約を考慮すると、日本で提携先が現れれば、再びハブ空港を移す可能性もゼロではない。果たして、再び成田や羽田が米国の航空会社の重要な拠点となるのか。2020年代半ばには、このトピックが注目を集めるだろう。

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