ローカル鉄道維持の敵は誰だ? 千葉県「低輸送密度路線」を巡った経営学者が見た、鉄道活性化を阻む社会構造の正体

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2024年11月、JR東日本が久留里線久留里~上総亀山間の廃止を発表した。少子高齢化やモータリゼーションの進行により、地方鉄道の存続が厳しい状況となっている。地域公共交通の再構築が急務であり、持続可能な交通体系の構築が求められている。

輸送密度低迷が招く地域鉄道の試練

五井駅に停車中の小湊鉄道キハ40形。全席指定の観光急行にも使用される。なお、上総牛久~上総中野間については、市原市は支援が要請を受けて存続と廃止の費用を比較検討することなどを通して支援の可否を決める方針である。2024年12月14日撮影(画像:大塚良治)
五井駅に停車中の小湊鉄道キハ40形。全席指定の観光急行にも使用される。なお、上総牛久~上総中野間については、市原市は支援が要請を受けて存続と廃止の費用を比較検討することなどを通して支援の可否を決める方針である。2024年12月14日撮影(画像:大塚良治)

 2024年11月27日、JR東日本は久留里線久留里~上総亀山間の廃止を発表した。国鉄分割民営化後、人口減少やモータリゼーション、道路網の拡大が進むなかで、輸送密度(1日1kmあたりの平均人数)の低いJR線を取り巻く状況は厳しさを増している。

 本稿では、JR線だけでなく、私鉄線も含めたいわゆる「ローカル鉄道」の現状を広く共有し、鉄道網の未来像を描くためのきっかけを提供したい。

 まず、日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(国鉄再建特措法)の規定と、JR発足後のJR各社や制度の動向について見ていく。JR線だけでなく、私鉄線の存廃議論でも国鉄再建特措法の規定が判断基準のひとつとなる。

 国鉄再建特措法は、次の除外基準を満たす路線を除き、1日輸送密度4000人未満の路線を特定地方交通線に指定し、原則バス転換することとした(第8条第2項および同施行令第3条)。

1.1つの方向に係る1時間当たり最大輸送人員1000人以上
2.代替輸送道路の整備が明らかでないもの
3.1年度当たりの積雪日数10日超
4.平均乗車距離30キロメートル超かつ当該区間における輸送密度1000人以上

 国鉄再建特措法で特定地方交通線に指定された路線はいずれもJR発足前後に、路線バスまたは第三セクター鉄道へ転換され、原則として、JR各社には「維持可能な路線」が移管されたはずであったが、JRに引き継がれた路線のなかでも、特に地方圏の線区は輸送需要の減少に直面し、一部では廃線も発生するようになった。

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