ローカル鉄道維持の敵は誰だ? 千葉県「低輸送密度路線」を巡った経営学者が見た、鉄道活性化を阻む社会構造の正体
筆者の意見

筆者(大塚良治、経営学者)は、久留里線の一部区間廃止表明を受けて、千葉県内の輸送密度が低い鉄道路線を中心に巡り、データの収集と整理を進めた。その調査を通じて、鉄道活性化を阻む深い社会構造が浮かび上がってきた。
12月のある土曜日、小湊鉄道線五井駅から、2両つなぎの上総中野行き普通列車に乗った。五井駅を出発する時点で乗車していたのは約60人だった。途中の里見駅では長時間の停車を利用して物販が行われており、駅本屋は国の登録有形文化財に指定されている。また、次に訪れた養老渓谷駅も駅本屋が同じく登録有形文化財に指定され、足湯が併設されている。
小湊鉄道は、その社名のとおり創業当初、小湊(現在の鴨川市の一部)への延伸を構想していた。日蓮の生誕地に建つ誕生寺への参詣客を輸送する狙いがあった(鹿島ウェブサイト)。
しかし、1928(昭和3)年5月16日に上総中野までの延伸でストップ。その後、1934年8月26日に国鉄木原線が同駅まで延伸し、小湊鉄道線と接続したことで房総半島の横断が可能となった。
2004年には「房総横断鉄道活性化プログラム推進委員会」が設立され、いすみ鉄道いすみ線(1987年4月1日に国鉄木原線からJR東日本木原線へ変更され、1988年3月24日にいすみ鉄道へ経営移管)と小湊鉄道線を合わせて「房総横断鉄道」としてブランド化が図られた。
現在、小湊鉄道線では観光急行、房総里山トロッコが有料列車として運行され、観光客の誘致と収入確保が図られている。しかし、2021年度の1日輸送密度は1000人未満である。一方、いすみ鉄道線は2024年10月4日の脱線事故以降、全線が不通となっている。
千葉県市原市が2024年6月27日に公表した『小湊鐵道線の今後のあり方に関する検討について(中間報告) 』では、2018年度以前には年間運輸収入と運輸雑収入が営業費を上回り黒字となった年度もあったが、
・2019年度以降は赤字が続いている
・上総牛久以南は鉄道の存廃を判断する必要がある
ことも記されている。