移籍トラムの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない【リレー連載】偏愛の小部屋(16)

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路面電車の「移籍トラム」は、新しい場所でも元の個性を残しながら活躍し続けている。広島電鉄や福井鉄道など、移籍した電車がどのように再生され、観光資源として利用されているかを紹介する。歴史ある車両が「里帰り」する例や、移籍先と出身地をつなぐ「動くタイムカプセル」としての役割にも触れており、乗るとその電車の長い旅路に感動すること間違いない。

やばいポイント3「懐かしの出身地カラー」

出身地の神戸市電カラーで走る大正生まれの582号。神戸市電は1971年に廃止、神戸市電カラーの現役車両が見られるのは広島だけ(画像:若杉優貴)
出身地の神戸市電カラーで走る大正生まれの582号。神戸市電は1971年に廃止、神戸市電カラーの現役車両が見られるのは広島だけ(画像:若杉優貴)

 移籍トラムは、移籍後も「出身地のカラー」をそのまま残して走っているものが多い。その代表例が広島電鉄だ。

 広島電鉄は、大阪市電(大阪府、1969年廃止)や神戸市電(兵庫県、1971年廃止)の中古車両を導入する際、塗り替えずに最低限の改造だけで運行したところ、関西の旅行者から「懐かしい」と好評を得た。そのため、後に移籍した京都市電なども、移籍前のカラーを残したままデビューし、広電は

「動く電車博物館」

として知られるようになった。現在では、岡山電気軌道やとさでん交通、熊本市電など、さまざまな社局でも「出身地カラー」を引き継いだ移籍トラムが活躍している。

 また、出身地ならではの特徴的な内装が引き継がれている例もある。例えば、神戸市電の車両は曲線を多用した優美なデザインで有名で、広島電鉄に移籍した582号も神戸市電カラーのまま活躍を続けている。実は582号は1924(大正13)年製で、今からちょうど100年前に作られた電車だ。同型車の多くが広電に移籍したが、現在生き残っているのはこの1両だけだ。

 100歳の電車とはいえ、582号はイベント用ではなく「一般車両」として運行されているので、もし運よく乗ることができたら、特徴的な手すりやつり革金具に「大正モダンの息吹」と「神戸のこだわり」を感じてほしい。

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