移籍トラムの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない【リレー連載】偏愛の小部屋(16)
路面電車の「移籍トラム」は、新しい場所でも元の個性を残しながら活躍し続けている。広島電鉄や福井鉄道など、移籍した電車がどのように再生され、観光資源として利用されているかを紹介する。歴史ある車両が「里帰り」する例や、移籍先と出身地をつなぐ「動くタイムカプセル」としての役割にも触れており、乗るとその電車の長い旅路に感動すること間違いない。
やばいポイント1「転入生アピール」

移籍トラムというと「乗っただけではわからない」と思うかもしれない。しかし、広島電鉄(広島県)や長崎電気軌道(長崎県)では、全国各地から来た電車や、福井鉄道やとさでん交通で活躍する外国からの電車には、車両の内外に
「移籍トラムの出身地」
が表示されている。さらに、ほとんどの路面電車運行会社のウェブサイトには車両紹介が掲載されているので、乗車中に詳しい来歴を調べることもできる。
また、移籍トラム自体が「観光資源」として利用されたり、「出身地のPR」に貢献していたりする例もある。例えば、とさでん交通は欧州各地から中古の市電を購入し、沿線の名物にしているだけでなく、車内に出身地の地図や案内、そして高知との由縁を掲示している。広島電鉄に移籍した京都市電(京都府、1978年廃止)の車両には、
・祇園
・舞妓(まいこ)
・大文字
といった公募で選ばれた「京都の風情を感じられる愛称」が付けられている。
ほかにも、車内外に移籍前の旧社局のマークや注意書きが残っていたり、あえて現地の古い広告が残されていたりする例もある。もし移籍トラムに乗ったら、ぜひ車内外を見回して「出身地の面影」を探してみてほしい。