沿線住民と徹底的に交流し、バスを活性化させよ【短期連載】希望という名の路線バス(4)

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コロナ禍で96%の路線バス事業者が赤字に。十勝バスは地域密着のコミュニケーション戦略で9年連続増収を達成。沿線訪問で信頼構築し、「マルシェバス」などの移動販売も成功。地域とのふれあいがバス事業の未来を切り開く。

「地域密着」バスの新機能

広尾駅跡にあるバス待合所(画像:写真AC)
広尾駅跡にあるバス待合所(画像:写真AC)

 筆者が自身の研究室で鉄道車両を「走るスーパー・買い物列車」として実験し始めた頃、十勝バスは2012(平成24)年12月から2022年2月まで「マルシェバス」の運行を開始した。鉄道車両の次は「走るスーパー・買い物バス」と考えていた頃である。

 先を越された感がある一方で、バス事業者自身が買い物バスの運行を検討していることを知り、うれしくもあった。買い物難民を防ぐと同時に、バスの社会的役割を高め、興味を持ってバスを利用してもらうためには、とてもよいアイデアだと感じた。なお、十勝バスの場合、定期路線バスの後方部分の約5割が店舗化されている。

 路線バスに移動販売機能を持たせたのは日本初だった。路線バスとして運行しながら、停車時間を設けて食品や雑貨を販売する手法は、当時のバス業界で大きな注目を集めた。

 また、帯広市大空地区では、ヤマト運輸と契約して宅配サービスを開始。帯広~広尾(広尾町)間では、佐川急便の荷物を運ぶ貨客混載バスも運行している。バス事業と地域物流の安定化を同時に実現する同事業にも乗り出し、地域のニーズに真摯に向き合っている。

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