ローカル線「廃線危機」という宿痾 コロナ後の集客にはいったい何が必要なのか

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ローカル線の集客施策について、国土交通省が検討会を立ち上げた。利用者を増やす活性化策の検討とともに、廃線も視野にバスへの切り替えなどを検討している。

キットカットとコラボした三陸鉄道

三陸鉄道(画像:写真AC)
三陸鉄道(画像:写真AC)

 また、2014年4月6日に全線が復旧した三陸鉄道(岩手県宮古市)でもさまざまな施策を実施している。

 毎年12月から翌3月まで、久慈駅~宮古駅の間を掘りごたつで暖まりながら移動できる「こたつ列車」が有名で、期間中1日1往復し、車内ではアテンダントによる案内のほか、小正月の伝統行事「なもみ(いわゆるなまはげのようなもの)」が登場するイベントや、事前注文でウニやアワビを使用した三陸ならではの弁当を楽しむこともできる。

 2011年からは架空の男性鉄道社員をクロスメディアコンテンツ化した「鉄道ダンシプロジェクト」を展開し、「田野畑ユウ(田野畑駅)や「恋し浜レン」(恋し浜駅)といったキャラクターが誕生した。そのほか、オンラインショップでは多彩なコラボ商品を販売している。

 復興に際してはさまざまな企業による支援企画が拡大し、クレディセゾンがカード会員を対象に支援者の名前を書いたプレートが枕木に設置される「枕木に名前を残そう!」ツアーを行ったり、ネスレ日本がキットカットのラッピングトレイン「キット、ずっと号」の運行に加え、運行寄付金付き「ネスレ キットカット ワールドバラエティ」や外箱が乗車券になった「ネスレ キットカット ミニ切符カット」を販売したり、ヴィレッジヴァンガードがTシャツやタンブラーなどのコラボ商品を開発したりした。

ローカル線乗車は「手段」から「目的」に

 このようなローカル線は、地域の観光資源のひとつとして機能している。さまざまな既存産業の市場がシュリンクする日本では、観光は将来的な成長性が見込める数少ない産業だ。

 近年、消費者の観光志向は徐々に変化している。風光明媚(めいび)な景勝地や大型レジャー施設といった、知名度の高い観光スポットだけではなく

・何気ない里山の風景
・古民家での宿泊
・農業体験

などが人気を呼んでいる。「希少性のある体験」を求める人が増えているといえるだろう。インバウンド(訪日外国人)のリピーターが増えるにつれ、既存にはない観光スポットも求められている。

 鉄道はこれまで「観光地への交通手段」だったが、それ自体が旅の目的となる可能性がある。ローカル線での独特なイベント列車は、希少性のある体験だ。例えそうではなくとも、緑のなかを素朴な列車が走っている様は里山の原風景として価値がある。

 日々求められる地方の観光産業の復興には、さらなるローカル線の活用が期待される。

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