「顔パス」は地方交通を救えるか 人口1200人の村で「観光バス+コミバス+送迎バス」一体化

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顔認証技術を用いて、異なる料金体系の乗客を扱うバスサービスの実証実験が、北海道で行われている。業務効率化への複数の壁を顔認証によって克服することが期待されている。

顔認証システムを用いた実証実験

顔認証により住民割引などを受けられる(画像:NEC)。
顔認証により住民割引などを受けられる(画像:NEC)。

 住民が安価で利用できるコミュニティバス、観光客が利用する通常の路線バス、企業が従業員の送迎のために借り上げるバス、それぞれが空席の多い運行を続けて疲弊するよりは、1台でそれらを賄えればいい――それを実現しようとする取り組みが、北海道の人口1200人の村で2021年12月11日(土)から始まっている。

 大きな壁となるのは、乗せる客が村民か、観光客か、従業員かを分類することだ。村民には村の補助金が、従業員には雇用企業からの福利厚生費などがそれぞれ投入されるため、乗客をひとりひとり正しく判別し、いわゆる「替え玉」による不正な割引乗車を排除する必要がある。

 これを実現するのが、顔認証システムだ。生体認証技術の開発を進めるNECが今回の取り組みに参加。北海道アクセスネットワーク株式会社が構築した予約決済システムと連携し、事前決済を行った客本人であるということをバス乗車時に生体認証する仕組みを作り上げた。

 事前決済と顔認証の組み合わせは、乗車時に乗客名簿と照合する対面手続きを解消することができ、外国語圏の需要が多い場面でも効果が期待される。

 実証実験が行われるのは小樽または札幌からキロロリゾートへ向かう路線。運賃は現金払いによる正規料金に対して、事前決済を行った場合は10%割引、顔認証を併用した場合は20%割引、事前登録された村民とキロロリゾート従業員は50%割引となる。

 NECは「公共交通と観光のDX化によって、複数の交通機関やサービスをシームレスに連携し、様々な用途で使えるMaaSソリューションを目指します」としている。実証実験は2022年4月3日まで。

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