ローカル線「廃線危機」という宿痾 コロナ後の集客にはいったい何が必要なのか

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ローカル線の集客施策について、国土交通省が検討会を立ち上げた。利用者を増やす活性化策の検討とともに、廃線も視野にバスへの切り替えなどを検討している。

いすみ鉄道の奮闘

いすみ鉄道(画像:写真AC)
いすみ鉄道(画像:写真AC)

 ローカル線はこれまで、地域の足を守るために知恵を絞り、個性的な集客施策で収益の改善を図ってきた。

 有名なものではいすみ鉄道(千葉県大多喜町)がある。同社は長く経営赤字が続いていたが、立て直しのために2007(平成19)年から社長を一般公募。民間から就任した社長の下でさまざまな試みが実践された。

 2010年には、訓練費700万円を自己負担することで列車運転免許を取得できる「自社養成乗務員訓練生度」を開始。鉄道を運転する夢をかなえるプロジェクトとして、大きな話題となった。この制度をドラマ化した「菜の花ラインに乗りかえて」が2013年にNHKBSプレミアムで放映されている。

 そのほかにも多彩なイベント列車を企画しており、ムーミンのラッピングトレインにムーミンの着ぐるみが乗車した「ムーミン列車」のほか、「ホタルウォッチングトレイン」「ハロウィン列車」「ジャズ列車」などを運行している。

 また、「レストラン列車 キハ」では車内で伊勢エビやアワビなどの外房の食材を使用したイタリアンのコースが楽しめる「伊勢海老特急イタリアン列車コース」やイノシシやシカなどのジビエ食材を使用した「房総ジビエ列車コース」などを提供。首都圏の日帰り観光ニーズの受け皿としても機能している。

SNSを駆使した銚子電気鉄道

「まずい棒」を持つ銚子電気鉄道社長・竹本勝紀氏(画像:ワクセル、銚子電気鉄道)
「まずい棒」を持つ銚子電気鉄道社長・竹本勝紀氏(画像:ワクセル、銚子電気鉄道)

 銚子電気鉄道(千葉県銚子市)では、ユニークな商品開発が行われて話題になった。鉄道事業の赤字経営に加え、不祥事などにより運転資金にも困窮する状況だったが、オリジナル商品の販売などで穴埋めしている。

 同社はSNSを使った情報発信も積極的で、「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。」と購入促進を訴えて一躍有名になったぬれ煎餅のほか、経営状況がまずいことにちなんだスナック菓子「まずい棒」、コロナ禍で経営状況が痩せ細っていることにちなんだアイス「ガリッガリ君」など、自虐的な商品が話題となった。また女性乗務員の写真集や、線路の玉砂利の缶詰なども販売しており、経営のために売れるものは何でも売るというスタンスに共感が集まっている。

 そのほかにも電車内をバルーンとイルミネーションで装飾した「イルミネーション電車」や、走る電車内で恐怖体験ができる「お化け屋敷列車」、銚子電鉄を守るローカルヒーロー「銚電神ゴーガッシャー」のアクションショーの一環である臨時列車「ゴーガッシャー号」など、独創性のあるイベント列車も実施している。2022年には同鉄道をテーマにした映画「電車を止めるな!」が公開された。