フードデリバリーで働く人は「労働者」と呼べるのか? そもそも労働法はフリーランスを保護できるのか、という根本疑問
形式的にはフリーランスだが、実態は労働者に近いというケースが散見される。本書はこうした現状を指摘し、フリーランスの「労働者性」に注目し、保護すべきだと主張する。
フリーランスの労働者性

近年、物流のラストワンマイル(顧客にモノ・サービスが到達する最後の接点)を担う存在として注目されているのが、個人事業主(フリーランス)として業務を行う配達員である。
アマゾンはこうした配達員を急速に増やしており、ネットスーパーでも個人事業主に業務委託をする形が増えている。また、ウーバーイーツの配達員もアルバイトやパートではなく、個人事業主に対する業務委託という形になっている。
こうしたフリーランスには、労働者にあるような
・最低賃金
・労働時間
などについての規制がなく、
・労災保険の適用
・労働者としての団結権
なども基本的にはない。
労働者が使用者側の指揮監督のもとで働くのに比べ、フリーランスは仕事を請けるも請けないも、仕事の進め方も自由であり、労働者に対するものと同じような保護は必要ないと考えられてきたのだ。
しかし、「フリーランスのカメラマン」のように自らのスキルを売りにするフリーランスと違い、アマゾンやウーバーイーツの配達員に高度なスキルは必要なく、また、仕事の進め方にも裁量があるとはいえない。形式的にはフリーランスでありながら、
「実態としては労働者に近くなっている」
のだ。
こうした状況を指摘し、フリーランスの「労働者性」に注目して、その保護を図るべきだと主張しているのが、今回紹介する橋本陽子『労働法はフリーランスを守れるか』(ちくま新書)である。
本書では、海外の法制度や判例なども交えながら、プラットフォーマーを介する形で仕事を受けるギグワーカーの保護のあり方と、今後の雇用社会のあり方を展望している。