「単なる休憩所」の時代は終わった!――1000億円市場のSA・PA、アウトレットと仕掛ける周遊型消費とは
高速道路のSA・PAが、アウトレットモールとの連携で新たな商業圏を形成している。2024年度NEXCO中日本管内売上は約1017億円に達し、移動者297万台に多彩な消費体験を提供。地域経済と観光をつなぐ戦略的モデルとして注目される。
高速SA・PAの商業圏化

かつて高速道路のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)は、休憩や食事を目的とする施設が中心だった。しかし、2005(平成17)年の日本道路公団民営化を契機に状況は変化した。民間企業となったNEXCO各社は、採算性と顧客満足度の向上を目指し、SA・PAの大規模リニューアルを進めた。有名カフェチェーンや専門店の誘致、地域産品や新サービスの導入にも積極的である。
その結果、多数のコンビニや有名コーヒーチェーンに加え、体験型アクティビティやエンターテインメント施設まで備える
「目的地型」
のSA・PAが全国に広がった。NEXCO中日本の事例では、2024年度のSA・PA売上高は約1017億円にのぼる。そのうち飲食・物販部門は約610億円で、SA・PAが巨大な商業圏として機能していることがわかる。
SA・PAの商業施設化は、新たなパートナーシップや地域産業との連携を促す役割も果たす。近年は、高速道路インターチェンジ周辺の郊外型アウトレットモールや大型商業施設との協業が進む。共同イベントや相互送客により、利用者の利便性や体験価値の向上を目指す取り組みが各地で広がっている。さらに
「道中そのものを楽しむ」
という利用者ニーズも高まっている。レジャーや旅行の目的にSA・PA利用を組み込むケースが増加しているのだ。NEXCO東日本管内の2023年度の日平均通行台数は約297万台に達する。この膨大な移動者に多彩な消費体験やサービスを提供することは、高速道路会社とアウトレットモール双方にとって大きなビジネスチャンスとなる。