「JRローカル線」存廃協議会スタートも、そもそも“バス転換”すら厳しい運転士絶対不足のハードモード

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ローカル線の存廃を協議する国の再構築協議会制度がスタートした。だが、バス運転士不足の深刻化でバス転換を選択肢から外さざるを得ない事態も考えられる。

JR西が再構築協議会設置を要請

岡山県のJR新見駅に停車する芸備線の気動車(画像:高田泰)
岡山県のJR新見駅に停車する芸備線の気動車(画像:高田泰)

 ローカル線の存廃を協議する国の再構築協議会制度がスタートした。だが、バス運転士不足の深刻化でバス転換を選択肢から外さざるを得ない事態も考えられる。

 10月4日の16時過ぎ、岡山県の北西端部に位置する新見市のJR新見駅。広島県庄原市の備後落合駅からやってきた1両編成のキハ120系気動車がホームに着く。定員105人に乗客ふたりという“空気”を運ぶような状態だったが、列車の到着を待っていた若い男性が駆け寄り、次々にカメラのシャッターを切り始めた。

「話題の芸備線に一度乗りたかった。もう見ることができなくなるかもしれないから」

この男性は休みを取って川崎市から来た鉄道ファンで、この日は新見市で宿泊し、翌朝の列車で芸備線を旅するという。

 改正地域公共交通法が10月から施行され、赤字が深刻なローカル線の存廃を鉄道事業者と沿線の地方自治体が協議する国の再構築協議会制度がスタートした。先駆ける形でJR西日本が協議会設置を国土交通省に要請したのが芸備線。対象区間は新見市の備中神代(こうじろ)駅から庄原市の備後庄原駅までの68.5kmだ。

 備中神代~備後庄原間の輸送密度(1km当たりの1日平均利用者数)はコロナ禍前の2019年度で48人。100円の収入を得るのに必要な経費が、2017~2019年度の平均で

「2万5000円以上」

という大赤字路線で、2021年からJR西と沿線自治体が利用促進の協議を続けてきた。

 しかし、存廃協議に踏み込みたいJR西とこれを阻止したい自治体が激しく対立し、議論は進まないまま。業を煮やしたJR西が再構築協議会制度のスタートを受け、設置要請に動いた格好。

 再構築協議会に舞台を移しても協議は難航しそうな状況だが、ここに来てもうひとつの難題が浮上してきた。バス運転士の不足だ。

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