ドライバー不足で「路線バス」減便相次ぐ 年収300万円台で若者敬遠、2024年問題加わり“泣きっ面に蜂”な現実

キーワード :
全国で路線バスの減便が拡大している。需要がある路線でも慢性的な運転士不足でバスを運行できなくなっているためだ。運転士はなぜ集まらなくなったのだろうか。

1日82便が7便に減少した路線も

広島市の紙屋町バス停留所。広島市内は4月から路線バスの減便が続く(画像:高田泰)
広島市の紙屋町バス停留所。広島市内は4月から路線バスの減便が続く(画像:高田泰)

 全国で路線バスの減便が拡大している。需要がある路線でも慢性的な運転士不足でバスを運行できなくなっているためだ。運転士はなぜ集まらなくなったのだろうか。

 市域がオホーツク海沿岸から大雪山系の石北峠まで東西約110kmに及ぶ北海道北見市。面積約1427平方キロメートルと全国の市区町村で4番目に広いが、公共交通に7月、異変が起きた。地域の足になってきた北海道北見バスの大幅減便だ。

 減便したのは、若葉線、三輪・小泉線など市内10路線と近隣の陸別町、美幌町などを結ぶ4路線の計65便。いずれも平日のみで、運行総数の1割強に当たる。主な理由は運転士の不足。北見バスは125人の運転士がいるが、退職者の補充が追いつかず、これまでのダイヤで通常運行するには10人ほど足りない。

 北見バスは「現状ではどうしようもない」と対応に苦慮するばかりで、減便解消のめどは立っていない。市民の間からは「通院に困る」などと不満の声が出ている。

 運転士不足による路線バスの減便が2023年度に入って加速してきた。減便中のバス会社は北海道から沖縄県まで全国に広がる。広島市では広島電鉄など5社が4月から12路線を減便した。なかでも、南区のJR広島駅や市中心部である中区の八丁堀地区から南区の旭町地区へ向かう広島バス旭町線は、従来の82便が朝夕ラッシュ時間だけの7便になった。

 以前からある「まちのわループ」線が広島駅へ運行を続け、西区のJR横川駅と八丁堀地区を結ぶ横県線が新たに旭町地区へ乗り入れて旭町線の減便をカバーしている。広島バスは

「旭町線は他路線と重複する区間が多かったので、調整した。現状の運転士数では便数維持が困難」

と苦しい胸の内を打ち明けた。

 鹿児島県鹿児島市の南国交通は鹿児島市を中心とした83便で進めている減便ダイヤを10月から通常に戻す計画だったが、2024年3月末まで先送りした。2022年度下半期に運転士24人が退職する一方、採用が7人にとどまったからだ。南国交通は

「新規採用が難しく、今の人員では減便を続けざるを得ない」

と頭を痛めている。

全てのコメントを見る