進むも地獄、退くも地獄 赤字ローカル線「存廃問題」が岸田内閣に突き付ける、沈黙の最後通告
JR西日本が発表した数字は2017年から19年までの3年間のため、コロナ禍による影響は反映されていない。それにも関わらず、発表された路線は深刻な赤字だった。
コロナ禍が旅行業界に与えた大ダメージ

2020年初頭から続く新型コロナウイルスの感染拡大によって、会食や多くの人が集まるイベント開催などの禁止といった方針が打ち出されてきた。また、それまで爆発的に伸びていた訪日外国人旅行客数もコロナによる入国制限のために急減した。
これに大きな打撃を受けたのが、旅行業界だ。旅行産業は、宿泊業や飲食業のほか、土産品を生産する製造業、テーマパークやミュージアムといったエンターテインメント産業、そして鉄道やバスといった交通事業者など裾野は広い。
訪日外国人観光客によって、わずかに命脈を保ってきた観光関連事業者たちは、コロナ禍で廃業に追い込まれた。
宿泊業・飲食業が廃業すれば、ますます観光客の足は遠のく。その負のスパイラルは生活の足でもあった鉄道をもむしばみ始めている。そして、2022年4月11日にJR西日本が2017年から2019年までの3年間における17路線30区間の収支、営業係数を初めて公表したことにより、ローカル線の苦境が現実味を帯びて語られるようになる。
JR西日本が発表した数字は2017年から19年までの3年間のため、コロナ禍による影響は反映されていない。それにも関わらず、発表された路線は深刻な赤字だった。
JR西日本が発表した赤字路線のうち、もっとも赤字が深刻だったのは芸備線の備後落合~東城間で、営業係数は「2万5416」となっている。営業係数とは100円を稼ぐために必要な経費のことで、つまり芸備線の備後落合~東城は100円を稼ぎ出すために2万5416円の経費が投じられていたことになる。