JRの廃線時対応「十分でない」 地方から聞こえる恨み節、国交省が改正地域交通法に異例の文言を入れたワケ
手切れ金渡して「はい、サヨナラ」
国土交通省と総務省は8月末に告示した改正地域公共交通法の基本方針に、鉄道廃線後もJR各社が公共交通維持に協力するよう求める文言を入れた。背景に何があったのか。「JRは鉄道を廃止したら、協力金を渡して知らぬ顔。手切れ金を渡して別れようとしているみたいだ」北海道留萌市で3月、市内の留萌駅と沼田町の石狩沼田駅を結ぶJR北海道の留萌本線35.7kmが廃止された。市内の飲食店主に電話で話を聞くと、受話器の向こうから不満の声が返ってきた。
代替交通はJR北と北海道、留萌市、沼田町が協議して選んだ。沿岸バスの留萌旭川線、沼田町営バスなど既存のバス路線中心で、新設されたのは早朝と夜間の予約制乗り合いタクシー、旭川市と高規格道路経由で結ぶ高速バス1日1往復だけ。そのうちの沿岸バスは廃止直後に赤字を理由に沿線自治体と存廃協議していることを明らかにした。
JR北はグループにバス会社を持つが、運行に加わっていない。廃線後の関与はまちづくり支援として沿線の地方自治体に拠出した7000万円のほか、最大18年間、代替交通を支援するにとどまる。
過去に廃線となった夕張市の石勝線夕張支線や様似(さまに)町など日高地方の日高本線鵡川(むかわ)駅以南と同じ対応で、JR北は
「廃線後の代替交通選定に関与していないわけではない」
北海道交通企画課は
「自治体主導で代替交通を決めるほうが住民のニーズをくみ取りやすい」
と説明するが、住民のなかには関与が不十分と考える人がいる。
同様の事例は、2018年に廃止された広島県三次(みよし)市と島根県江津(ごうつ)市を結ぶ三江(さんこう)線でも見られた。三江線は沿線108.1kmを14区間に分け、中近距離の路線バスなどをつなぎ合わせて代替交通とした。その後、利用が低迷する一部区間が廃止され、現在は10区間で代替交通が運行している。
JR西日本は沿線自治体に代替交通の支援金17億円超を支出するとともに、代替交通を確保するため、国交省中国運輸局が設けた代替交通確保調整協議会に参加した。しかし、グループのバス会社は運行に加わらなかった。
広島県地域政策局は
「三江線廃線当時の対応を十分と考える住民は多くないのではないか。これで廃線後も地域公共交通の維持に一定の責任を果たしたといえるのだろうか」
と疑問を投げかける。