要介護認定700万人超え間近も 「介護・福祉タクシー」の利用を阻む高すぎるハードルの正体
ハードルが高すぎる利用

国土交通省は2020年11月、2021年度以降のバリアフリー目標の最終とりまとめを発表。福祉タクシー車両は20年現在3万7064台を、2025年度末までに約9万台とする約9万台とするとした。さらに、各都道府県におけるユニバーサルデザインタクシーを総車両数の約25%を目標としている(22年1月11日発表によると、ユニバーサルデザインタクシーを含む福祉タクシーは4万1464台)。
福祉タクシーとは、身体障害など移動が困難な人に向けたタクシーで、正式名称を「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)」という。スロープやリフトが付いており、ユニバーサルデザイン車両を使用する。管轄は国土交通省である。
利用は、身体障害者手帳の交付を受けている人、要介護認定を受けている人のほか、要支援、精神障害で単独の移動が難しい人が利用できる。最近ではユニバーサルデザインの車両であれば福祉タクシーに含めており、こちらは誰でも利用できる。
一方、介護タクシーは、福祉タクシーと同様に利用できるものと、介護保険が適用される「介護保険タクシー」がある。前者は福祉タクシーと同様に国土交通省が管轄しているが、介護保険タクシーは訪問介護の「通院等乗降介助」に該当するため、介護保険の管轄である厚生労働省も関係する。
介護保険タクシーは、移動のみ介助のみといった単独の利用はできず、通院時などの移動と介助が必ずセットとなる。要介護1以上でなければ利用できず、通院や預貯金引出、選挙など社会生活上必要な外出に限られている。しかも、家族等の同乗は認められていない(訪問介護員など家族以外の付添人は可)。
さらに、利用にはケアマネジャーによるケアプランが必要だ。ケアプランに沿った利用のみ可能となり、他の介護サービスと同様にハードルはそこそこ高い。
そこで自費で介護タクシーか福祉タクシーを利用するかになるわけだが、通常の福祉タクシーでは乗降の介助ができない場合がある。介護タクシーは運転手が介護職員初任者研修を受けているため、乗降の介助が可能だ。病院内での付き添いはできないが、ケアプランに記載があれば受付や会計の介助(生活支援)程度であれば認められる。
これらの理由から、介護タクシーの需要は高く、予約はとても取りにくい。思いついたときや緊急の際に利用することができないのが難点だ。
最近では、福祉タクシーによる「車いすや障害度による乗車拒否」も問題となっている。利用者からは「乗車拒否は日常茶飯事」という声もあり、福祉タクシーを増やすだけで解決できる問題ではなさそうだ。