クルマの「右折」はなぜ危険なのか? 交差点事故6割の原因、ラウンドアバウト設置無理なら「左折」で対応だ
自動車による信号交差点の右折は、安全上の問題が多い。横断する歩行者との事故件数に限ってみても、過去10年間の総計で右折が「60%以上」を占める。対策はあるのか。
歩行者事故「60%以上」が右折

自動車による信号交差点の右折は、安全上の問題が多い。横断する歩行者との事故件数に限ってみても、過去10年間の総計で右折が「60%以上」を占める。
この問題について、工学分野などで状況の分析と対策の検討がなされてきたが、今回は社会心理学などを基に、右折の問題を社会的な視点から考えてみることにしたい。
スムーズな交通を妨げる右折

事故以外に、右折にはスムーズな交通を妨げる問題もある。右折をするには対向車を止めなければならず、右折車のためだけの時間と空間を確保しなければならない。
もちろん、右折専用のレーンや信号が整備されているところも多いが、交通量が特に多い場合、右折を待つクルマが専用レーンでは収容しきれず、直進レーンをふさぐ形で後続車の速度維持や通行そのものに障害をきたすこともある。もともと、右折の交通量をまかなう空間や時間の資源には限界があるのだ。
このような限界は、右折を試みるドライバーの心理にも悪い影響を与える。時間が限られることに加え、他の通行を止めていることへの引け目などから、焦りにつながりやすい。交通量が多く、自分が曲がる順番の前に信号が変わってしまう場合など、その焦りは心理的なダメージや、果ては怒りにまで及ぶ。
さらに運転技術上、右折は他の状況と比べて難しい要素が多いといわれている。正確な進行方向を誘導する手がかりが少ない上に、他の車両や歩行者からのさまざまな危険を察知する必要もあり、そのうえ判断の時間も限られているとなれば、負担は大きく、特に運転に不慣れであったり、高齢などで認知能力に限りがあったりする場合などは大きな障害となる。