クルマ社会のデメリットは「渋滞」だけじゃない! 日本に公共交通が必要なのは「住民の足を守る」以上のメリットがあるからだ
公共交通は単に「住民の足を守る」ためだけに必要なわけではない。その理由を解説する。
1億円の公共交通促進政策で約8億円の支出を節約
ドライバーが気付かない外部不経済があるのに対し、公共交通も当事者が気付かない外部経済がある。列車の騒音などはマイナスの外部不経済といえるが、総じてみれば、社会全体にとってプラスになる便益である、
先述した自動車の外部不経済の裏側にあたる論理として、もし、公共交通が自動車を代替すれば、上記で見た自動車の社会的な負荷を削減することができる。昨今の国際情勢を考えれば、資源の効率的な活用という点でも、公共交通の意味合いは大きい。
さらに、公共交通の場合、自動車を運転できない人の社会参加を促し、そうした人たちの健康改善につながる可能性もある。健康という点では、100m先のコンビニに行くのも自動車に乗るライフスタイルがもたらす運動不足も問題で、社会全体として健康な人が増えれば、医療費や介護費の削減にもなる。
富山市では、高齢者の公共交通の利用と外出促進のために、高齢者のバス代を大幅に割り引く「おでかけ定期券」を年間約1億円支出して実施しているが、京都大学ほかの共同調査による試算では、この施策により、富山市は医療費を年間約7.9億円節約できたという。公共交通への支出は、他の部門の支出を減らす「クロスセクター効果」ももたらす。
また、このような形でより多くの人の社会参加が実現すれば、人と人とのつながりや信頼関係の構築にもつながるという研究成果もある。そうした人間関係はソーシャルキャピタルと呼ばれ、社会生活や経済活動を支える、目に見えないインフラとして知られる。